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川口和久コラム「各球団のドラフト戦術が変わった?」

 

最近のドラフト会議は、見た目的には完全にショー化されてきたけど、球団関係者の頭の中は真逆。緊張感たっぷり


1位は素材重視に


 ドラフト会議は新監督の仕事始めでもあるけど、今回は中日与田剛新監督が大阪桐蔭高・根尾昂の交渉権を引き当てた。球団のおヒザ元の岐阜県出身だし、何か持ってるね。

 これで104人の若者がプロ野球選手としてのスタートラインに立った。全員じゃないかもしれないが、入団を決めた選手は、年明けから野球漬けの日々になる。授業も仕事もなくね。

 体力に自信があるという選手でも、自主トレ、キャンプで一度は落ちる時期が必ずある。体力的な部分だったり、技術的な壁だったり、あるいはメンタル的にやられて、野球が好きじゃなくなるときもあるかもしれない。ただ、これはどんな選手でも通る道だからね。

 第二関門は一軍キャンプ、次が開幕一軍スタートとなるけど、これはすべてじゃない。チームの育成方針もあるし、焦る必要はまったくないよ。特に高卒選手は、急がば回れ、くらいの気持ちでいいんじゃないかな。

 今回のドラフトの最大の特徴は、1巡目で11球団が高校生野手を最初に1位指名したこと。根尾は投手で取ったのかもしれないけどね。昔、高校生野手の1位指名は、それほど多くはなかった。1位は大学、社会人の即戦力や甲子園のスター投手がほとんど。今回のメンバーであれば、外れ1位だった東洋大の甲斐野央上茶谷大河、金足農高の吉田輝星クラスなら、最初から1位で複数球団が指名してもおかしくなかった。

 確かに今年の高校生選手の質が高かったのはあるかもしれないけど、近年、ドラフトに対する各球団の戦略が変わってきた中での象徴的なドラフトになったような気がする。

 つまり、1位は「素材」。その年の候補選手で、もっともポテンシャルが高い選手を指名し、その後で、いま各チームに足りない即戦力を指名していくという流れだね。1位で報徳学園高の遊撃手・小園海斗を外し、次に俊足強肩の立命大の外野手・辰己涼介を外し、その次で甲斐野を取ったソフトバンクは、その典型じゃないかな。サファテの年齢、岩嵜翔の故障を考えれば、最初が甲斐野でも不思議じゃなかった。小園は今宮健太の後継者と言うけど、今宮は27歳。外野だって、新人が食い込む余地があるようには見えない。

吉田は早熟型?


 昔からそうだけど、アマチュア時代の実績がそのままプロで出せるわけじゃない。それよりは数年後を見据え、じっくり鍛えて、となってきている気がする。実際、ソフトバンクは育成も含めてはっきりその方向を示しているし、広島が伝統的にその方向性で来て黄金時代を迎えてるわけだしね。結果を出している2球団をほかも見習い出したということじゃないかな。

 甲子園のスターだった吉田が外れ1位になって日本ハム1球団だったというのも、同じ流れを感じる。甲子園の投球過多が不安視されたのかもしれないけど、彼がある程度、完成形にあると各球団が判断したんじゃないかと思っている。野球センスは高いと思うけど、上背もあまりないし、早熟か大器晩成タイプかでいえば早熟型と判断したんだろう。斎藤佑樹(日本ハム)タイプだね。あ、栗山英樹監督に怒られちゃうかな。

 ただね、すべては入ってから。本人の努力もそうだし、コーチとの出会い、チームの起用法もある。巨人桑田真澄も上背はなかったけど、プロで173勝挙げている。いまから5年先なんて誰も分からないよ。俺の担当だった広島の伝説的なスカウト、木庭教さんも言っていたけど、やっぱりドラフトはギャンブルさ。すべては一か八か。

 だから当たらなかった新監督も心配なく。下位の選手や外れ1位の選手のほうがよかったことは珍しくないし、今度、監督に復帰した原辰徳さんはクジが1勝9敗だぜ。逆にいえば、それだけ欲しい選手を外しても優勝できたということさ。

 まあ、クジ運だけを考えたら、今回のドラフト会議は俺に引かせてほしかったな。菊花賞、ジャストミート! 儲けさせてもらいました。

PROFILE
川口和久/かわぐち・かずひさ●1959年生まれ。鳥取県出身。左投両打。鳥取城北高からデュプロを経てドラフト1位で81年に広島入団。3年目の83年に先発の一角を確保し、86年からは6年連続で2ケタ勝利を挙げた。95年にFAで巨人へ移籍、98年限りで現役引退。巨人のコーチも務めた。通算成績435試合登板、139勝135敗4セーブ、防御率3.38。
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広島、巨人で活躍した川口和久氏が独自の視点でプロ野球に斬り込む連載コラム。

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