
無観客で行われた3月6日、甲子園での阪神-日本ハム戦/写真=早浪章弘
たくさんの音
懐かしい音がした。ピッチャーが指でボールを切る音だ。俺はコーチ時代、いつも耳を澄ませ、この音を探した。ただ、テレビ中継で、この音を聞いたのは初めてだった。
新型コロナウイルスの感染拡大が続き、プロ野球のオープン戦も無観客で続いている。寂しい思いとともに、感じるのは「野球の音」だ。
ベンチの選手のヤジ、激励の声、打球音。収音マイクの高性能もあるのだろうが、さまざまな音が、テレビ中継で聞き取ることができ、新鮮に思っているファンも多いと聞く。
俺は、野球ほど音にあふれたスポーツはないと思っている。本来、これほど音が、選手のプレーに直結するスポーツもない。
守備では、長年の練習の積み重ねもあり、選手はバットの音に反応するように体が出来上がっている。内野手の守備で言えば、打球音で芯に当たったか、詰まったか、先っぽかを判断し、一歩目が瞬時に動く。芯に当たった音なら打球が速いから待ってもアウトにできる、この音なら打球が弱いから前に出なきゃいけないと、無意識のうちに体が反応する。
投手の音もある。俺は
巨人の投手コーチ時代、ピッチャーの指がボールを切る音を大事にしていた。よく指に掛かった球というけど、本当に音がする。ブルペンで聞こえるのは当然としても、ベンチからでも球場が静かなら聞こえる。
この音が大きいほど、その投手が好調だと判断した。ふだんから一番音が大きかったのは・・・
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