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井端弘和 野球の“極意”

井端弘和コラム 第18回(最終回)「日本一をもたらしたのは高橋奎二の投球です」

 

日本シリーズ第2戦、しり上がりに調子を上げてオリックス打線を完封したヤクルト高橋奎二選手。彼の力投がシリーズの行方を大きく左右しました


 日本シリーズはセ・リーグ王者のヤクルトが、パ・リーグ覇者のオリックスを4勝2敗で下し、20年ぶり6度目の日本一を勝ち取りました。セ・リーグ勢の日本一は2012年の巨人以来、9年ぶり。セ出身の私もここ数シーズンの結果は気になっていましたので、ヤクルトが頑張ってくれたと思います。

 6試合中5試合が1点差ゲームで、第2戦のみ2対0という、今世紀中まで拡大してみてもあまり見当たらない稀(まれ)に見る大接戦。試合展開はずっと変わりませんでした。先発投手がそろって高いパフォーマンスを発揮して試合をつくる。一方で得点は四球が絡んだものが多く、また二死からの得点も今シリーズの特徴でした。そして一方が得点すれば、間を置かずにもう一方が得点する、取って取られての展開。最後までその形は変わらず、すべて接戦となりました。

 ただ、全6試合を通じて多くの時間で優位に試合を進めていたのはヤクルトでした。オリックスは2勝したとはいえ、第1戦は9回裏のサヨナラで、リードして迎えたイニングはありません。唯一、オリックスが2点差以上をつけ、ほんの少しの余裕を持って試合を展開したのは、2勝目を挙げた第5戦の7、8回だけ。それでも、8回裏に山田哲人選手に同点の3ランが飛び出すのですから、最後にジョーンズ選手のソロで勝利を収めながらも、「ヤクルト強いな」と思わされたのではないでしょうか。

 しかし、逆の展開になっていた可能性は十分にありました。何しろ第1戦、ヤクルトはクローザーのマクガフ選手を投入しながら、1つもアウトを取れずに2点差を引っくり返されるサヨナラ負け。あのままズルズルと行き、あっという間にシリーズが終わっていたかもしれません。その嫌な流れを引き寄せたのが、第2戦先発の高橋奎二選手の完封劇です。オリックス先発の宮城大弥選手も非常に出来が良く、5回までパーフェクトピッチング。一方の高橋選手は初回から5回まで毎回安打を許します。それでも要所を締め、しり上がりに状態を上げていきました。6〜7回は四球1個のみとほぼ完璧。

 試合の流れ的にも2点差の9回、前夜に1つのアウトも取れなかったマクガフを投入するのは、いかに高津臣吾監督が彼を信頼していたとしても、決断は難しかったと思います。そこにきて、高橋選手のしり上がりの快投。8回終了時点で122球に達していましたが、「最後まで行け」と思いながら見ていて、9回のマウンドに立ち、三番・吉田正尚選手、四番・杉本裕太郎選手、代打のジョーンズ選手と、最も力のある選手たちを三者凡退締め。前夜のサヨナラ負けの嫌なイメージを、一気に払しょく。ここに尽きると思います。

 シリーズMVPは投手陣を巧みにリードし、打撃面でも大きく貢献した中村悠平選手で文句なし。ただ、私は高橋選手も候補の1人と思って見ていました(優秀選手賞受賞)。わずか1試合の登板でしたが、シリーズの流れを見れば、初戦敗退のあとの第2戦の完封勝ちは、計り知れない価値があった、ということです。ヤクルトに流れを、おつりがくるくらい引き寄せたのではないでしょうか。私が選ぶもう1人のMVPです。

PROFILE
井端弘和/いばた・ひろかず●1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。右投右打。内野手。堀越高から亜大に進み、98年ドラフト5位で中日入団。ゴールデン・グラブ賞7度の華麗で堅実な守備と、しぶとい打撃で2000年代の中日黄金期を支えた。14年に巨人に移籍し、15年限りで引退。即コーチとなり、19年からは侍ジャパン内野守備走塁コーチ。通算成績は1896試合1912安打56本塁打410打点149盗塁、打率.281。
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中日・巨人で活躍した名手がプロの技術・判断などについて深く掘り下げるコラム!

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