1985年、阪神唯一の日本一戦士のひとりだ。「六番・レフト」としていぶし銀の光を放った。引退後はコーチを経てアマチュアスカウトに。足しげく通うことで人脈を広げ、多くの選手たちをスカウト。球団総括、顧問として阪神の育成を支えてきた。 取材・文=椎屋博幸 
2020年に顧問の職を勇退して約2年。今でも総括スカウトのときには獲得した選手たちの活躍を気にしている
いかに選手にほれ込むか
2020年限りでアマチュアスカウト部門の顧問を退団した。現在の主力選手は、総括スカウト、顧問として獲得に尽力した選手たちだけに、結果が気になるという。それはやはりアマ時代から愛情を持ってスカウティングしていたからだ。 現在の阪神の主力選手たちは、私がスカウト時代に獲得してきた選手たちです。いつも気になって試合を見ています。今年の開幕直後のつまずきは、少しもったいなかったですね。現在はだいぶんよくなりましたけど。やはりスカウトした選手たちの活躍は気になります。
1991年に現場のコーチからスカウトへ。このときに先輩たちから言われたことは「選手をしっかり見ること。試合を見ること」。これが大事なのだということでした。そして多くの選手を見ながら、自分で“良い選手とは”を判断していくということが求められました。
最初は先輩についていき、紹介をしてもらったり、私自身が知り合いがいる大学などにも足を運んだりと、いろいろな方法を試みました。とにかく有力選手のいる各学校などに、足しげく練習に通いましたしね。1年目はとにかくいろいろなチームに顔を出すことに一生懸命だったのが、2年目以降は私の顔を覚えてもらうようになり、だんだんと人脈が広がっていきました。その関係が出来上がっていくことで、その人脈から、さらにいろいろな情報を教えてもらえたりしていました。当時インターネットはないですし、すぐに画像が見られるわけではないですから、そこはやはり人と人のつながりで選手の情報をもらっていました。
その中で、どの選手がいいのか、というのはなかなか最初のうちは分からなかった。先輩方からは「第一印象を大事にしろ」とよく言われましたね。自分自身が「いいな」と思った選手は、その一番いい特徴を最大限に見ていくことが大切なことだと。
実際に、第一印象を大事に、選手を見ていくようになったわけですが、やはり何度も何度も足を運んで、同じ選手を見ていくと・・・
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