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日本代表を率いる小久保監督。その手腕、野球スタイルはいかに?


2013年秋に26歳以下の選手たちを率い、台湾で3試合の親善試合(3戦全勝)を行ったものの、制限なしのフル代表を率いるのは今回の日米野球が初めて。現役時代、ダイエー・ソフトバンク巨人の四番を長く定位置とし、パンチ力を1つの武器とした小久保裕紀監督は、どのような野球を目指し、2017年の第4回WBCでの“世界一奪回”に挑むのか―。これまでの発言と、今回の選手選考から、小久保野球を予想していく。

WBC本番さながら。カギは球数&使用球


 小久保裕紀監督の考えに迫る前に、まずは「2014 SUZUKI 日米野球」の大会規定(特別ルール)を知っておく必要があるだろう。ここでは国内リーグとは異なる、国際大会ならではの規定が採用されている。

大会規定
[1]DH制=採用する。
[2]ベンチ入り選手=28名。
[3]審判MLB2名、NPB2名。
[4]投手の球数制限=80球を超えて投げることはできない。ただし、ある打者の打席中に投球数制限に達した場合は、その打席完了まで投球できる。50球以上投げた場合、次の登板まで中4日をあけなければならず、30球以上、または2日連続で投げた場合、次の登板まで中1日をあけなければならない。記念試合および親善試合は制限なし。
[5]延長戦=9回を終えて決着がつかない場合、延長10回以降は無死一、二塁からタイブレーク制を実施。打順は9回終了時点から引き継ぎ、先頭打者の直前の2人が一、二塁走者となる。延長12回終了時点で同点の場合は引き分け(左記の賞金は折半)。記念試合および親善試合は延長なし。9回終了時点で同点の場合は引き分け。
[6]使用球=ローリングス社製(WBC使用球)。記念試合は阪神・巨人連合チームが守備時のみ、NPB統一使用球を使用。
[7]賞金総額=1億円(内訳:優勝チームに5000万円、第1戦から第5戦の各試合勝利チームに1000万円ずつ)。

 肝心なのは[4]〜[6]。延長に関する規定が一部、2013年の第3回WBCとは異なるものの、侍ジャパンがターゲットに据えるそのWBC本番と、ほぼ同様のルールの中で行われることに、意味がある。今回のメンバーを「17年のベースになる選手たち」で構成した小久保監督にとっては、良いシミュレーションとなるだろう。

 投手選考に大きな影響を与える[4]の投球数制限に関しては後述するが、[6]の使用球も、主に投手陣の中に「滑る」、「変化球の曲がりが変わる」と、WBC直前になってもアジャストできない選手が必ず現れ、起用法に影響が出る毎度の問題点。昨秋の台湾遠征ではローリングス社製とは異なるメーカーのボールを使用しており、小久保監督も大会後の総括でWBC使用球をと希望していた部分である。

2013年の第3回WBCで使用されたローリングス社製の大会公式球。「2014 SUZUKI 日米野球」でも、同様のローリングス社製球が使用される



 今回の採用は大歓迎で、「ボールに関してもデータがとれる。もちろん、選手選考の判断材料になる」と指揮官。17年まで時間が残されてはいるが、アジャストしていく可能性が低い投手と判断がなされれば、今後の招集を見送られることも考えられる。

投手力こそ日本の強み。先発が“11人”のワケ


 今大会で招集を受けた13人の投手のうち、所属チームでリリーフを専門職にしているのは西野勇士ロッテ)と高橋朋己西武)の2人のみ。今大会で招集を受けた13人の投手のうち、所属チームでリリーフを専門職にしているのは西野勇士(ロッテ)と高橋朋己(西武)の2人のみ。考えられる。

 そこで先のリリーフ専門の2人の登場である。先発投手にはイニング途中からの登板経験が少ないことも考慮し、彼らには専門職としての役割が期待されている。「1試合を2人で」が理想なのだから、計算上、“中継ぎ”は、先発と第2先発をつなぐ1人で十分ということとなり、リリーバー2人のみの招集にも説明がつく。


リリーフ専門職でメンバー入りしたのは西野勇士と高橋朋己の2人だけ。第一、第二先発をつなぐ重要な役割を担う



 また、1試合を2人で投げ切れば、基本的にはクローザーは必要ないが、西野、高橋は今季それぞれ31セーブ(パ3位)、29セーブ(パ4位)。場合によっては最後の1イニングを託すことも可能であると同時に、適性のあるスターター1人を、クローザーへ配置転換(もちろん侍ジャパンでのみ)して待機することも考えられる。

四番・中田翔は不動。長打力には否定的?



 自身もそうであったように、小久保監督には“右の四番打者”に強いこだわりがあるようだ。昨秋の台湾遠征でも3試合を通して中田翔日本ハム)を据えており、「日本人の中で一番長打力に長けている。昨年の台湾戦で四番を打った経験を生かし、今秋はメジャー相手にホームランを打てる日本人としてアピールしてもらいたい」と期待する。今季初の100打点超えで打点王のタイトルを獲得した若き大砲に、引き続き大役を任せる方針だ。

メンバーでは唯一の長距離砲である中田翔。四番を打つことが期待されるが……



 一方で、日本の長打力に関しては否定的でもある。小久保監督自身、92年のバルセロナ五輪(銅メダル獲得)を筆頭に、2度の日米野球出場など豊富な国際経験を持つが、「経験上、国際大会は(日本のレギュラーシーズンとは)別。望むように長打が打てるとは思っていない」。

 メンバーを見ても、中田(27本塁打)のほかに今季20本塁打をクリアしたのは山田哲人ヤクルト)だけ。山田にしてもシーズン193安打(日本人右打者のセ・リーグ最多安打記録を更新)のように、本来は中距離ヒッター。指揮官は長打を打てる選手にとっては(日米野球でも打てるのかの)チャレンジとしつつも、「国際大会では足を使った攻撃が大切になる」。柳田悠岐(ソフトバンク)の33盗塁を筆頭に、糸井嘉男オリックス)31盗塁、丸佳浩広島)26盗塁、坂本勇人(巨人)、菊池涼介(広島)の23盗塁など、捕手を除く野手12人のうち9人が今季2ケタ盗塁を記録した“走れる”中距離ヒッターと、その狙いは明確だ。

 WBC出場経験のある選手をそろえたMLBオールスターチームを相手に、平均年齢25.9歳(第3回WBC出場の侍ジャパンは29.0歳)と大きく若返りを図った侍ジャパンは、どのようなリアクションを見せるのか。小久保監督は日米野球を「限られた強化の場」と位置付けている。采配も、選手起用も、現段階のベストをチョイスしていく方針のようだ。17年の世界一奪回に向けて、重要な戦いが始まる。
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