今季が開幕してから対戦がひと回りし、各チームの全貌が見えてきた。その中で、外国人起用に成功しているチームはどこなのか。野球解説者の広澤克実氏に、12球団の助っ人事情と注目選手を挙げてもらった。 セ・リーグ編/阪神は期待どおりの働き
まずはここまで好調な
阪神ですが、
呉昇桓、
マートンという投打の穴埋めがポイントでした。
マテオ、ヘイグが新加入したわけですが、勝っているチームなので、今のところは順調といえるのではないでしょうか。オープン戦では低調だったヘイグもまずまずの結果を残しており、首脳陣も一安心でしょう。
また、新クローザー・マテオの高速スライダーは他球団の打者を苦しめています。問題はマテオまでどうつなぐかですが……。7年目の
メッセンジャー、すでに4本塁打を放っている3年目のゴメスも期待どおりの働きをすれば言うことなし。4人のうち1人がダメでも、二軍には長身右腕のドリスがスタンバイしている。外国人投手3人体制もありそうです。

阪神の新クローザー・マテオ。この右腕につなげるまでの継投がポイントとなる
対するライバルの
巨人は、外国人については悩みどころでしょう。大砲・
ギャレット、そして
ロッテからクルーズが新たに加入しました。4本塁打の四番・ギャレットはオープン戦より調子を上げている印象ですが、五番・クルーズは打撃フォームを崩しており、開幕戦で見せた元気を失いました。投手では右腕の
マイコラスは長期離脱中で、ポレダは阪神の足攻に戸惑い黒星を喫しました。この左腕がいなければ先発6枚も危うい状況。中継ぎ右腕の
マシソンも決して本調子ではなく、
高橋由伸監督の苦悩は続いていきそうです。

阪神戦では足攻で揺さぶられた巨人のポレダ。昨季は5勝2敗と相性が良かったが……
ほかのチームで目を引くのは、
中日の
ビシエドです。開幕から3試合連続本塁打は圧巻でした。とにかくヘッドスピードが速く、低めの変化球にも対応できる右の強打者。
ヤクルトの
バレンティンが入ったときと同じ衝撃を覚えました。ビシエドが四番にいることで、前を打つ
高橋周平にも刺激を与えている。打線の厚みは昨季よりも増しており、彼らの奮起次第ではBクラスからの脱却も可能ではないでしょうか。

鋭いスイングが際立つ中日・ビシエド。強竜をよみがえらせる救世主となれるか
広島はルナの加入が効いています。中日時代から実績を残しており、バットコントロールの巧みさは見事。今後、ヒットを量産していきそうな雰囲気があります。この四番の後ろを打つ
エルドレッドも打撃好調です。投手では昨年の最優秀防御率(1.85)に輝いた左腕のジョンソン、新加入した右腕・
ジャクソンはクイックに難ありの印象ですが、中継ぎとして機能しています。外国人はバランスの良い布陣と言えるでしょう。
ヤクルトは左ワキ腹痛で離脱していたバレンティンが戻り、スタメンでは彼が唯一の外国人。かつての60本塁打とは言いませんが、40本前後打てれば、ヤクルトも面白い存在になりそうです。ただ、問題はブルペンにあります。昨季はオンドルセク、ロマン、バーネットがいましたが、残ったのはオンドルセクのみ。この穴埋めには苦労しそうです。
DeNAは4月9日にロペスが3打席連続本塁打を放ち、ようやく目覚めた印象ですが、外国人選手はそろって低調。チームを変えるような存在は見当たらないですね。チームのウイークポイントを補うのが助っ人。そのデキがチーム成績に直結することは言うまでもありません。
パ・リーグ編/ロッテ・ナバーロの衝撃
100人の野球解説者がいれば、そのほとんどが
ソフトバンクのリーグ優勝を予想したでしょう。選手層の厚さは12球団の中でも群を抜いています。しかし、フタを開けてみれば序盤は苦しんでいます。これが野球の難しさでしょうね。
先発の柱である
バンデンハークは昨季からの無傷の連勝(11)を継続中で、良いピッチングを見せています。ただ、クローザーの
サファテは昨季ほど空振りを取れておらず、早くも救援失敗を経験しています。打線では
李大浩の抜けた穴と言っても、チームとしては競争が増え、むしろ歓迎すべき状況。外国人の打力に頼らずとも、必ず浮上してくるはずです。

早くも救援失敗を喫したサファテ。41セーブを挙げた昨季と比べれば、付け入るスキもありそうだ
面白い存在はロッテです。
デスパイネを中心にリーグ屈指の攻撃力を発揮していますが、私が特に注目しているのは復帰間近のナバーロです。春季キャンプで目の当たりにした彼のスイング力と軌道、打撃フォームは本当に衝撃的でした。あの状態のまま今の打線に加わったら、どんな力を発揮するのか。楽しみですね。

まもなく出場停止が解けるナバーロ。すでに破壊力を発揮しているロッテ打線にさらなる厚みがもたらされそうだ
西武は投打ともに日本人選手が充実しており、外国人への依存度は他球団に比べたら低いようです。
秋山翔吾、
栗山巧、
中村剛也、
浅村栄斗、
森友哉といった柔剛併せ持つ布陣があり、さらに
メヒアもいる。相手からすれば気の抜けない打線です。投手陣もエース
岸孝之という大黒柱がいる中で、
バンヘッケンというサウスポーがいる。日本人選手と外国人選手が共存共栄するチームですね。
打線が好調な
楽天では、ゴームズに注目しています。軸がぶれないスイング、ボールを振らない姿勢が良く、日本向きの選手という印象を持ちました。四番には打撃好調な
ウィーラーもいますし、この2人が打線のキーマンとなりそうです。

初本塁打も飛び出し、調子を上げつつあるゴームズ。ぶれない軸と選球眼をすでに披露している
日本ハムは
中田翔、
中島卓也、
西川遥輝など若手選手がチームの中心に育ってきており、西武と同様、外国人への依存度は低い。ただ、長いシーズンを戦うためには、ここまで4本塁打をマークしている
レアードのような存在も不可欠です。投手では、メンドーサにまだ白星がついていないところが気がかりな点です。
そして最後に
オリックス。モレル、
ボグセビックという新外国人コンビが打線の中心を担っていますが、開幕から11試合連続本塁打なしは深刻な状況。
糸井嘉男を筆頭に個々の力はあるけれど、チームとして機能していない印象です。それでもシーズンは始まったばかりで、状況は常に変化します。その中で外国人がどんな働きをするかに注目したいですね。
PROFILE ひろさわ・かつみ●1962年4月10日生まれ。栃木県出身。小山高、明大を経て85年ドラフト1位でヤクルト入団。95年から巨人、2000年から阪神でプレーして03年に現役引退。打点王2回(91、93年)。07、08年には阪神で打撃コーチを務めた。通算成績は1893試合出場、1736安打、985打点、306本塁打、打率.275。
【番外編】最強助っ人はホーナー
これまで日本に来た外国人選手の中には、メジャー・リーグの“元四番”はたくさんいたでしょうが、前年に四番を打っていた“現役バリバリ”は、私の記憶では
ボブ・ホーナーくらいしか思い浮かびません。日本人は打席で良い当たりを飛ばそうと、大きくタイミングを取ることが多い。そのほうがボールへパワーが伝わりやすいですから。でもホーナーは、ちょっとしか引かないんです。車にたとえると、日本人がアクセルを目いっぱい踏んで200キロのスピードを出すのに対し、彼は半分しか踏まなくても同じスピードを出すことができる。ムダな動きがない分、緩急にも対応できるわけです。87年途中にヤクルト入りし、31本塁打を放ちました。このシーズンのみの所属でしたが、僕が見てきた外国人選手の中では、間違いなくホーナーがNo.1の助っ人でしたね。