1990年代に4度の優勝を遂げた野村ヤクルトにおいて、不動の中堅手だった飯田の守備力は際立っていた。91年から97年まで7年連続のゴールデン・グラブ賞を受賞。俊足強肩で、どんな打球にも食らいついていった。その外野の名手は現役時代どんなグラブを好み、使っていたのか。 取材・構成=牧野正 写真=椛本結城、BBM バッティングマシンでポケットをつくった
外野を守るようになってグラブへのこだわりが強くなった。柔らかさよりも硬さにこだわり、大きめではなく小さめを求め、深いポケットを好んだ。飯田にとってグラブは商売道具というよりも存在証明のようなものだった。型付けはバッティングマシンで行い、自分好みのグラブをていねいにつくり上げていった。守備に自信があったのは、信用できるグラブがあってこそだった。 どちらかと言うと、柔らかめのグラブよりも硬めのグラブのほうが好きでした。ペラペラしない、グニャグニャにならない、わりと硬めのグラブ。カチカチに硬いわけじゃないですよ。硬めのほうがボールを捕るときにぶれないというか、柔らかいとグラブがずれる感じが自分の中であって嫌でした。硬めのほうがカチッとボールがグラブに収まる感覚があって好きだったんです。
例えば、強い打球のゴロを捕るときにも、柔らかいグラブだと先が折れてしまう感じがするし、強いライナーでもグラブの先で捕るには弾かれやすい。現役時代に使っていたこのグラブも何十年も経っていますけど、まだ十分に硬いでしょう?(写真下)。ただニュアンス的には「硬めが大好き」というよりは「柔らかいのがダメ」のほうが正しいかもしれません。

90年代前半に試合で愛用したグラブ。今でも十分に使えるほど
一般的に外野手のグラブは少し大きめですが、僕は小さめのグラブを使っていました。大きければその分、重くなってバランスが悪いし、バランスが悪いと走りづらいし、グラブが少し大きくなったところで……という思いも正直ありました。よく「少しでも大きいほうがボールを捕る確率が高くなるし、グラブの先っぽにボールが引っ掛かる可能性もある」と言われますが、そんなことは滅多にない(笑)。ボールを捕るのはグラブの先ではなく、ほとんどポケットの部分ですから。
大きいグラブのほうが安心感があるのは分かりますが、外野の守備で大事なのは、まず早く落下点に行くこと。ボールを捕るのはその次の段階でしょう。捕る前にそこまで動かなければならないですから、グラブのせいで走りづらくなってはいけないわけです。外野守備は「早く動いて、ゆっくり捕る」が鉄則。ゆっくり捕るのは、より確実に捕球するため。打球は動いていますから、それで自分の動きも大きくなってしまえば、その分、捕球でミスが出やすくなります。もちろん追いつけるかどうかの際どい打球は、そんなことはできませんが、自分が早く動いて構え、ゆっくりした体勢でボールを捕るのが一番ミスが少ないわけです。
さらに僕がこだわったのはポケットがしっかりしている深いグラブでした。そのために親指側と小指側、両外側を外に広げ、間口を広くしていました。ですからグラブのどこに当たってもポケットに収まりましたね。収まるというか、自然にそこへ転がっていく。柔らかいグラブだとグラブの中でボールが動いてしまって、これができないんです。
ポケットは・・・
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