1位指名の事前公表が例年になく少なかった今ドラフト。会場で指名選手が明かされるたびに起こったどよめき。ファンの鼓動が高鳴った2024年のドラフトだった。 4球団競合の末、金丸の当たりクジを引き当てた中日・井上新監督[左]は派手なガッツポーズ
ドラフト前日までの1位公表は
宗山塁(明大)の名を挙げた
広島のみ。2022年は9球団、23年は4球団だっただけに、24年は近年とは傾向が違った。各球団はいったい誰を1位で指名するのか。期待と不安が入り混じるドラフト当日。ファンは直前まで新しい情報は出ていないか確認しただろう。だが、状況は変わらないまま刻々とドラフト開始時間が迫る。
17時03分。ファンにはなじみのある低い声が「第1巡選択希望選手。埼玉
西武。宗山塁、内野手。明治大学」と読み上げると、会場は歓声とともに大きな拍手が沸き起った。注目の結果は、宗山を西武、
楽天、広島、
日本ハム、
ソフトバンクの5球団、
金丸夢斗(関大)を中日、
DeNA、
阪神、
巨人の4球団、
西川史礁(青学大)を
オリックス、
ロッテの2球団が指名。
ヤクルトは
中村優斗(愛知工大)を単独指名して交渉権を獲得した。第1回1巡目入札は全球団が大学生だった。
最初に抽選が行われたのは宗山。5球団がクジ引きに臨み中身を確認すると、西武に続いて2番目に引いた楽天の森井誠之球団社長がガッツポーズ。今ドラフトの目玉の交渉権を引き当て「全スカウトの皆さんが、とにかく一番の選手でいこうということで私を送り出してくれた。皆さんの思いで(クジを)引かせていただきました」と興奮気味にコメントした。
次はセ・リーグ4球団が競合した金丸。幸運を手にしたのは中日だった。1番目に右手で引いた中日・
井上一樹新監督が、左手で当たりクジを持ちながら「今までで一番」の派手なガッツボーズ姿を披露し、会場を沸かせた。最後に西川を巡ってオリックス・
岸田護新監督とロッテ・玉塚元一オーナー代行が壇上に上がる。岸田新監督がクジの中身を見て天を仰いでいる間に、玉塚オーナー代行がゆっくりと確認。控えめにガッツボーズをし、喜びを表した。
その後、2回目1巡目入札名でも
石塚裕惺(花咲徳栄高)を西武と巨人、
柴田獅子(福岡大大濠高)を日本ハム、ソフトバンクの2球団が重複。それぞれ巨人、日本ハムが交渉権を手にしたが、今ドラフトでは合計5回の抽選が行われた。休憩をはさみ、再開後は2位指名から順調に進んでいく中、オリックスの6位で15分超の中断。該当する選手がリストに載っていないとNPB関係者から説明を受けたオリックスは指名を取り下げ、違う選手を指名し直すハプニングも起こった。
19時30分に始まった育成ドラフトでは全12球団が参加。今季から二軍に参戦したオイシックス新潟から
下川隼佑、くふうハヤテから
早川太貴の両投手がそれぞれ3位で指名された。20時28分に育成指名が終わり、24年のドラフト会議は幕を閉じた。支配下69人、育成54人、計123選手がプロ入りへのスタートラインに立った。
今ドラフトでは、15年連続指名を受けた明大、育成を含めて同一チームから史上最多の6人が指名された富士大と2つの記録が更新された。中日4位では
石伊雄太(日本生命)、オリックス4位では
山中稜真(三菱重工East)の名が呼ばれたが5年ぶりに社会人出身捕手の指名。また、通算525本塁打の
清原和博氏(元西武ほか)を父に持つ
清原正吾(慶大)、甲子園のマウンドに4度立った右腕・
高尾響(広陵高)らは指名漏れとなった。
ドラフトの答え合わせは、早くて1年後。5年後、10年後にこの中から日の丸を背負う選手が何人現れるのか、今後の活躍が楽しみだ。
■2024年ドラフト1位指名経過 【注】◎=抽選の末に交渉権確定、○=単独入札、×=抽選外し