甲子園を取り巻く日本の高校野球の文化は、日本特有のものだと言われるが、その甲子園を目標に海を渡ってきた少年がいる。異国の地で努力を重ね、夢舞台を目前にしながら、その土を踏むことはできなかった。しかし、悔しさも涙も力に変えて、プロ野球選手になった。まだまだ夢の途中。その歩みを進めていく。 文=阿部ちはる 写真=BBM 
陽柏翔[明秀日立/現楽天/内野手]
内なる敵と戦う日々
野球少年なら誰もが一度は夢見る甲子園。その舞台を海の向こうでも夢見ていた少年がいる。明秀日立高からBCL/茨城を経て、昨年のドラフト会議で楽天から6位指名を受けた陽柏翔。新型コロナの影響で1年遅れたが、高校2年時から野球留学のため来日した。
日本でプレーしたいと考え始めたのは小学生のとき。そのころからスマホで日本の野球動画をよく見ていたそうで、5年生のときに甲子園の映像を見つけた。高校球児たちが甲子園球場で輝く姿に釘付けとなり、日本の野球に対するあこがれはより強くなっていったという。
「日本に来る前から甲子園については調べていて。高校生にとって一番大事な大会だということは知っていました」
そして2022年の春、ようやく来日。部員全員が甲子園に向かって練習に励む姿は刺激的だった。
「めっちゃいい雰囲気でした。練習も練習試合も大会も。みんなが『甲子園に行くぞ』という気持ちで一生懸命やって。本当にすごかったです」
陽の高い身体能力と真面目な性格は日本の野球にすぐにフィットした。夏の茨城大会は背番号16をもらいベンチ入り。明秀日立の甲子園出場に貢献した。しかし、甲子園が開幕すると、その姿はアルプススタンドにあった。当時を苦い表情で振り返る。
「甲子園の前にベンチメンバーを決めるチーム内での試合があったんです。そのとき、めっちゃ緊張してしまい・・・
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