
宜野湾市立野球場に到着した松井氏を中畑監督がアツく抱擁
巨人やヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏が、所属球団以外では初めてとなる他球団のキャンプ視察を行った。巨人の先輩でもある中畑清監督の「強い要望」に応え実現したDeNA訪問。“キヨシとヒデキ”の競演に、宜野湾は大いに沸いた 取材・文=為田聡史(日刊スポーツ) 写真=内田孝治、大泉謙也 『最後の恩返しをしろ』と言われて。そんなに世話になっていないんですけどね(笑)」(松井秀喜)
2月5日。ちょうど正午になろうとしているときだった。松井秀喜氏を乗せた白いワゴン車が宜野湾野球場の正面玄関に到着した。一斉にカメラのフラッシュを浴びる。巨人時代からの師弟関係になるDeNA中畑清監督が最上級の笑顔で抱き寄せて出迎えた。
「何回もお断りしたんですが『頼むよ』の一点張り。『最後の恩返しをしろ』と言われて。そんなに世話になっていないんですけどね(笑)」。中畑監督からの情熱あふれる、粘り強い“交渉”の裏側を明かした。
DeNAの青いジャンパー姿でグラウンドに登場すると、ナインを前に「今季は最低でもCSを目指して、私も応援しています。3日間しかいられませんが、有意義な時間にしたいと思います。頑張ってください」とあいさつ。
日本球界では巨人一筋で、他球団の着衣に身を通したこともなかった松井氏のDeNAキャンプ視察がスタートした。
シート打撃、フリー打撃、さらには最後の特打までグラウンドに立ち続けて球界の後輩たちの動きを見つめた。高田GMも「この寒い中、スーツにジャンパーだけで最後まで練習を見て行く。そういう男なんだよ。選手たちには、この機会に何か1つでも感じとってほしい」と松井氏の振る舞いに目を細めた。
今季四番に指名されている新キャプテンの筒香は自ら松井氏のもとにアドバイスを求めに行った。「どういう準備をすればいいのかを聞きました。自分は反対方向(への打撃)から入るんですが『間違っていない』と言っていただいたので変えずにやり続けたい」(筒香)。球界の将来を担う若武者たちにとって、スーパースターからの金言は確かな自信にもつながった。

【2月5日】青のジャンパーを着た松井氏が円陣で待ち受けた選手にあいさつ

【2月5日】「アドバイスは何もない」と若き主砲・筒香を絶賛

【2月5日】中畑監督とともに鋭い眼差しで練習を見守る
一軍が休養日となった視察2日目の同6日は二軍の練習を精力的に視察した。この日は中畑監督とともにジャージー姿でグラウンドに登場。練習後に急きょ、翌7日のフリー打撃実施をかけて、「打者キヨシVS投手ゴジラ」のフリー打撃対決を開催。「ワンバウンドでフェンスに当てたらキヨシの勝ちとなり、フリー打撃を行う」というものだったが予想どおり、中畑監督の完敗に終わった。だが、同監督は「俺がやったんだから決まり。明日やります」と一方的に宣言。「約束が違う」という松井氏の反論を強引にねじ伏せた。

【2月6日】前日の夜に来日した新外国人投手エレラと握手

【2月6日】荒波から打席へ入る際の心構えを聞かれ答える松井氏

【2月6日】中畑監督と夢の対決!? 結果はゴジラの完勝
最終日の7日。中畑監督、沖縄のファンが熱望していた「ゴジラのフリー打撃」が実現した。午後1時から約10分間、
高橋尚成を打撃投手に松井氏が打席に立った。結果は47球に対し28スイング、1本塁打。ライトスタンドに放り込む1発に球場が大いに沸いた。
所属球団以外では初のキャンプ視察を終えた松井氏も有意義な時間を過ごし充実感を示した。「せっかくお客さんにたくさん見に来ていただいたので、1本だけでも打ててよかったです」と胸をなでおろしつつも「温かく迎えてくれてすべてがやりやすかった。皆さんのおかげで楽しかったです」と笑顔で球場を後にした。

【2月7日】最終日にフリー打撃が実現。投手は巨人時代の同僚、髙橋尚

【2月7日】47球中28スイング。右翼席に1本運び、スタンドを沸かせた

【2月7日】松井氏自らの提案でサイン会を開いた
こちらは2年連続!巨人宮崎キャンプ訪問

訪問初日の2月3日、ドラフト1位ルーキー・岡本と言葉を交わす松井氏
【1日目】 宮崎キャンプ3日目の2月3日、松井秀喜氏がサンマリンスタジアム宮崎を訪れ、選手たちを激励。ストレッチを終えた選手たちの前に立ち、「昨年は最後に悔しい思いをした。その悔しさを忘れず、またゼロから始めるつもりで、今キャンプでしっかり体をつくって、日本一を奪回してほしい」とあいさつした。
午後は二軍の練習が行われているひむかスタジアムに移動し、ルーキー・
岡本和真選手に熱い視線を送り、「センター中心に素晴らしい打球が飛んでいましたし、スイングも非常に力強かった。高校を卒業したばかりだが、本当に素晴らしいバッターだと思います」と高く評価した。
岡本の視察を終えた松井氏は今度はサンマリンスタジアムに引き返し、
大田泰示の打撃練習を見守った。昨年のキャンプで臨時コーチとして熱心に指導した愛弟子の1年後の成長した姿に「表情が去年よりも落ち着いている感じがしました。振りがスムーズで力強かったですし、去年見せていただいたときよりはいいバッティングをしていたような気がします。去年の試合の中で自信をつかんでいる部分もあるでしょうし、彼の中で何か変わっている部分があるんじゃないかなと思います」。
【2日目】 春季キャンプ第1クールの最終日となる2月4日も、前日に続き視察。早速、
坂本勇人が別メニュー調整を行っている木の花ドームに足を運び、約5分の間、坂本からの質問に答えた。松井氏は坂本について「チームの中心として引っ張っていってほしいですし、その能力がある選手ですから期待しています」。