2018年シーズンに大きな飛躍が期待される男たちを紹介する連載インタビューの最後を飾るのは、高卒3年目の若手有望株、東京ヤクルトスワローズの廣岡大志だ。最も評価が高いのはスケールの大きい打撃。一軍最年少21歳の遊撃手は、すべてにおいてどん欲にレベルアップを図っている。 ※成績・情報は4月8日時点 取材・構成=富田庸、写真=小山真司、川口洋邦(インタビュー) ミスをしても常に前向きに
成功と失敗を繰り返しながら、驚くほどのスピードで成長している。若いからという甘えはなく、むしろ若さを武器にしようとするどん欲さ。真剣勝負の中で、“山田哲人2世”と呼ばれる若きスラッガーが、飛躍のときを迎えようとしている。 ──5試合連続ノーヒットから一転、4月7日の
巨人戦[神宮]では5打数5安打2打点の活躍でした。
廣岡 最近ちょっと調子が悪かったので、来た球を思い切り打とうと思って打席に入りました。自分でも信じられないです。
──初のお立ち台に上がりました。
廣岡 緊張し過ぎて……(苦笑)。話すのが下手なので、かまないようにと。でも、打ったことより(平凡な遊飛で三走・
ゲレーロの生還を許した)タッチアップ。あれは良くなかったです……。
──プロ3年目のシーズンがスタートしましたが、どのような気持ちで日々の試合に臨んでいますか。
廣岡 去年のオフから、この3年目のシーズンは、これからの野球人生においてすごく大事になると考えていました。開幕一軍入りし、スタメンで出場するという目標を立て、秋季キャンプ、自主トレ、春季キャンプに臨んできました。1年目、2年目はファームで多くの試合に出させてもらい、その中で三木コーチ(
三木肇)からは「守備をしっかりやろう」と。ショートという大事なポジションを守るわけですから、守備を重点的に鍛えてきました。
── 一軍の首脳陣が大きく入れ替わり、秋季キャンプから守備面で
宮本慎也ヘッドコーチ、
土橋勝征内野守備走塁コーチが加わりました。
廣岡 秋季キャンプを経験して、練習の多さを実感しました。だから、その練習量に対してケガをしない体を作る、そしてしっかりとケアをすることを心掛けてきたんです。その結果、キャンプでは常に良い状態で練習することができましたね。でも、開幕スタメンはつかみ取ったというより、出させてもらっているという表現のほうが正しいと思います。
──自分の実力だけではないと。
廣岡 大引さん(
大引啓次)がケガをしていたので、正直チャンスだと思っていました。だから、選ばれたことは素直にうれしかったです。
──「七番・遊撃」で迎えた開幕戦は、どんな空気感でしたか。
廣岡 周りの方からは「緊張するぞ」と言われていて、確かに試合前までは独特な雰囲気で緊張感もあったんです。でも、始まってからはそれほど緊張することなく、あわてずにプレーできたと思います。
──第1打席は空振り三振でした。
廣岡 シーズン一発目の打席で、場面も場面でしたから(前打者・
坂口智隆の先制2点適時二塁打の直後という好機)。結果的には三振でしたけど、その瞬間に「次」と切り替えられたので、その点は良かったです。
──失敗を引きずらないタイプ。
廣岡 どちらかと言えば、守備でのミスを引きずってしまうんです。でも、この2年でそれじゃダメだなと分かるようになりました。試合は続くわけですし、常に前向きにプレーしていかないと。

守備では課題も多いが、エラーを恐れることなく全力でプレーしている
──第2打席にはライト線に落ちる今季初安打が二塁打となりました。
廣岡 打った瞬間に「うわっ」と思ったんです。ライトフライかセカンドフライかと。ラッキーでしたね。どんな形であれ、記録としてヒットが1本出たことで、気持ちの面で少しラクになりました。
──浅い当たりで二塁を陥れ、相手の悪送球で坂口選手が生還。自身も三塁に到達しました。積極果敢な走塁だったように思います。
廣岡 あの場面では、ショートの
大和さんがベースから離れているのが見えたので、思い切って行きました。でも、三塁ベースコーチの河田さん(
河田雄祐)からは「もっと慎重に見極めてから」と指摘されました。確かに好走塁と暴走は紙一重ですから。「結果オーライではダメだぞ」と言われましたし、僕もそのとおりだと反省しています。
──走塁にも高い意識がある。
廣岡 チームとしてどうやって得点するかが大事ですから。打つだけでなく、足を絡めて点を取っていかないといけません。ベースランニングだったり、リードの幅。足からプレッシャーをかけていけば、相手にミスが出るかもしれないですし。河田さんは基本的なことを毎日のように言ってくださるので、自然と走塁に対する意識は高まったと思います。
すべてを認められてあの場所を守りたい
キャリアのある大先輩の背中から何かを学び、首脳陣の叱咤激励に必死に応える。かつて池山隆寛、川端慎吾らが着けた出世番号「背番号36」の継承者。チームの大黒柱となるべく、全力プレーを続けていく。 ──自身が七番に入っている、今季のヤクルト打線をどう感じますか。
廣岡 上位にすごい打者がたくさんいるという印象です。だからこそ、上位打線だけで終わらせないようにしないと。そのためには「七番」が大事なポジションだと感じています。下位のつなぎ役というか、しっかりと上位につないでいけば、上位で得点できるパターンが増えるはずですから。僕の後ろは中村さんで、その次がピッチャーなので、八番で勝負されないケースも出てくると思います。走者がいる場面で僕が打たないと後ろの打者が苦しくなるので、そこは強く意識しています。
──現在、四番には
青木宣親選手が座っています。廣岡選手から見て、青木選手がチームにもたらしたものは何だと思いますか。
廣岡 僕は春季キャンプからこれだけ長く一軍にいさせてもらうのは初めてなんですけど、本当に積極的に声を掛けてくださって。試合中でも、点を取られた直後に青木さんがベンチ前で集合をかけて「1点ずつだぞ」などと言ってくれるんです。みんなが思っていることでも、青木さんが実際に言葉にすることで、選手間ではっきりとした共通認識になりますから。本当にリーダーシップがある方だなと思います。
──新加入といえば、
石井琢朗打撃コーチも広島から加わりました。
廣岡 バッティングにおいて意識するポイントなどを、選手一人ひとりに的確にアドバイスしてくれます。本当にありがたいですね。
──そしてヘッドコーチとして、燕のショートの大先輩である宮本慎也さんが戻ってきました。
廣岡 すごく野球を知っている方です。遊撃守備について質問することがたくさんあるんですけど、勉強になることばかりです。記者の方にはバッティングのことばかり聞かれますけど、僕は「まずは守備から」と思っているんです。練習でいま意識しているのは、右足の運び方。右足で間を取るというか、ボールとの距離を取ることです。あとはグラウンドが土だったり、人工芝、天然芝で違うことが多いので、分からないことがあればすぐに聞きにいきます。
──話を聞いていると、廣岡選手が成長できる環境があると感じます。
廣岡 そうですね。毎日が勉強です。
──守備中にマウンド上のブキャナン選手に声を掛けるなど、内野の要である遊撃手の役割も、しっかりとこなしている印象です。
廣岡 要のポジションだということは自覚しています。ただ捕って投げるだけではない。しっかりと周りを見てプレーしないといけないので。自分よりも年上の選手ばかりですけど、グラウンドに立つ以上、年齢は関係ないと思っています。ひと言声を掛けることで投手が落ち着いたり間が取れるのであれば、積極的にやっていくべきですから。

ベンチに戻る際、ベテラン投手の館山に声を掛ける廣岡[写真右]。グラウンドで最年少という意識は持たない
──高卒3年目で開幕からスタメン出場を続けているわけです。心身の疲労はありませんか。
廣岡 2月から練習試合、オープン戦、そして公式戦と、ずっと出させてもらっています。周りからもよく「疲れていないか?」と心配されるんですけど(苦笑)、精神的には全然大丈夫です。むしろありがたいことですし、首脳陣の方々には感謝の気持ちしかない。まだまだ足りないので、24時間、野球のことだけを考えて、1日でも早く遊撃でレギュラーの座をつかみ取りたいです。
──まだつかみ取っていない?
廣岡 もちろんです。レギュラーだとは少しも思っていないです。西浦さん(
西浦直亨)も打っていますし、大引さんが戻ってきたらどうなるか分からない。すべてを認められてあの場所を守りたいですし、そのために毎日どん欲に取り組んでいます。体の張りはあっても、精神的なしんどさはないですよ。小川監督(
小川淳司)からも「若者らしく、はつらつと」と言われているので。結果はもちろん大事ですけど、若いからこそできる思い切ったプレーもあるので、そういう部分でチームに勢いをつけて、勝利に導けたらなと思います。
廣岡大志が自己分析!特殊能力 思い切りの良いスイング
守備は試合で凡ミスをしているので0点です(苦笑)。打撃も走塁もまだまだ胸を張って高得点をつけられるような出来ではないです。走攻守すべてで課題だらけですけど、そのぶん伸びる余地があるということ。思い切りの良さで勝負したいです。
■周囲の廣岡評 宮本慎也ヘッドコーチ 「長打を打てる可能性を秘めた選手で、良いものを持っている。うまくなりたいという気持ちがすごく出ているし、何より体力がある。守備では止まって捕るクセがあるから、足を運んで入らないと。試合中にミスをして、怒鳴り散らした後に4安打。楽しみだね」
PROFILE ひろおか・たいし●1997年4月9日生まれ。大阪府出身。183cm81kg。右投右打。苗代小4年時にオール松原ボーイズで野球を始め、昭和中3年時に同チームで全国優勝。15歳以下の日本代表に選ばれた。智弁学園高では2年時に春夏連続で甲子園に出場。1学年上に
岡本和真(現巨人)がいた。2016年ドラフト2位でヤクルトに入団。ルーキーイヤーにはプロ初打席で初本塁打。3年目の今季は開幕スタメンを勝ち取り、レギュラー定着を目指す。
ユーザープレゼント
廣岡大志選手の直筆サイン入りBBMカード
※締め切りは2018年4月23日(月)、当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。※ご応募いただいた個人情報は、懸賞の目的以外での利用はいたしません。