不振に故障、さらに新型コロナの感染による離脱と開幕から勢いに乗り切れない。逆転Vへは打線の奮起が欠かせぬ中、日替わりオーダーで、最後の最後に攻撃の形を見いだしていく。 ※記録は8月28日現在。成績部分の丸数字はリーグ順位 【パ・リーグ3位】 61勝57敗1分 勝率.517
392得点(4)、369失点(2)、打率.247(3)、66本塁打(6)
55盗塁(5)、61失策(4)、防御率2.75(2)

8月25日に中嶋監督に新型コロナ陽性反応が出て離脱。水本ヘッドコーチ[写真右]が監督代行を務めて挑んだ西武との3連戦も、いつもどおり打線を組み変えるなど、戦う姿勢は変わらない
119試合で117通り
試行錯誤は数字が物語る。今季119試合を消化して、先発オーダーは117通り。昨季は5月から一〜四番を
福田周平、
宗佑磨、
吉田正尚、
杉本裕太郎で固定し、ファンに“福宗正杉”と呼ばれ上位打線が得点源となったが、今季は形をつくれず。不振や故障、さらには新型コロナの陽性反応で離脱と、開幕からベストメンバーがそろわぬ中で模索し続け、シーズン終盤を迎えた今も固まらないまま。選手の状態や相手投手との相性を踏まえての起用もあり、
中嶋聡監督の悩みの種なのは、試合後のコメントからも分かること。前日はベンチスタートの選手を抜擢起用した意図を問うと、明言を避けつつ、こう口にしてきた。
「どうすれば(打線が)つながるか。ずっとそれを考えていますので。その中で(起用した)ということです」
開幕直後は昨季の本塁打王・杉本が不振を極め、復調したかと思えば新型コロナで離脱。5月に入ると軸である吉田正が新型コロナで離脱し、復帰後の試合前練習で左太ももを痛める不運もあった。最大6連勝を飾りながら最大連敗は7。波に乗ったかと思えば、離脱者が出て戦う形が固まらず、苦肉の“日替わりオーダー”で我慢の戦いを続けてきた。
とはいえ、出場機会を得た選手はチャンス。モノにした1人が
中川圭太だ。新人年の2019年、交流戦で12球団トップの打率.386を記録するなど、巧打が武器の男も近年は苦しんでいた。昨季、チームは25年ぶりの優勝を果たす一方で、中川圭の出場試合は61。6月には左手有鉤骨の手術を受けたこともあり、打率.212と力を発揮できず「自分は何もできなかった……」と歓喜の中で悔しさをにじませていた。
今季の開幕時もファーム。そんな中で巡ってきたチャンスに目の色を変えないわけがない。5月に今季2度目の一軍昇格を果たすと安打を量産し、打順は徐々に昇格。外野に一塁と守備のユーティリティーさも武器にレギュラーをつかむと、クリーンアップを任されるようになった。
日替わりオーダーが続いた中でも、吉田正の復帰、杉本の復帰かつ復調で、三番・中川圭、四番・吉田正、五番・杉本の中軸を確立。それぞれの頭文字『中吉(よ)杉』をとった『仲良すぎ』と呼ばれた3人の奮起が原動力となり7月に借金を返済。貯金をつくって後半戦に入ると、最初のカードで
ロッテに3連勝と、一気に首位戦線にまで浮上した。
中川圭の奮起で、できつつあった攻撃の形。だが、不運は続く。8月21日に杉本が新型コロナの濃厚接触者の疑いで離脱。26日からの優勝戦線を争う西武との直接対決の前日(25日)に復帰も、翌日の試合前練習で左ハムストリングスを痛め(筋損傷)再び登録を抹消……。追い打ちをかけるように、同25日には中嶋監督に新型コロナの陽性反応が出て、指揮官不在で西武との3連戦を迎えることになった。
フレーズの真意
主砲と指揮官の離脱と、大事な終盤に手痛い戦力ダウン──。ただ、そんな26日に球団から発表された『ファイナルスパートプロジェクト』のキャッチフレーズは、昨季と同じ『全員で勝つ!』だった。
監督代行を務める
水本勝己ヘッドコーチは決意を口にする。
「一戦一戦集中。それぞれが自分のやるべきことをやること。勝利に向けてベストを尽くすこと。自分の仕事としては、とにかく考え抜いて考え抜いて、(中嶋)監督の帰りを待ちたい」
“全員で勝つ!”の真意はここにある。役割の徹底が、チームの形をつくり、結果として勝利を手繰り寄せていく。だから、もはや問題は、打順の固定ではない。日替わりオーダーこそが、今季の戦う形だ。
「すべてではないが、こうやろうと思ったときに『オレもやろうと思っていた』など、考えていることが似通っている」
中嶋監督が昨季の優勝後、水本ヘッドの存在をこう口にしていたとおり“監督代行”も固定概念にとらわれず指揮を執る。西武3連戦の打順は日替わり。結果は1勝2敗と手痛い負け越しも、初戦は初回から果敢にエンドランを仕掛け、終盤は代打攻勢と策を打ち、2戦目は二番に抜擢した
西野真弘が3安打と奮起して勝利を呼び込んだ。3戦目は先発予定の
椋木蓮が右足首をねん挫して登板回避と、アクシデントがある中で投手起用に悩まされ敗戦も、戦う姿勢は随所に示した。
28日の試合後には、救援右腕の
近藤大亮、打撃好調を維持していた西野が新型コロナの陽性反応で離脱。勝負強さを見せていた宗佑磨も、28日の試合で右肩に違和感を覚えて途中交代と、リーグ連覇を期すシーズン最終盤も試練はなお続く。

福田[左]のチャンスメークで打線を機能させ、昨季と同様に下位に座る紅林[右]の奮起も待たれる
そんな中だからこそのキャッチフレーズ『全員で勝つ!』だ。昨季、躍進の理由は冒頭の“福宗正杉”のみならず、
安達了一、
紅林弘太郎ら、下位打線が好機をつくって上位に回す形もあったことを忘れてはならない。それこそが働き場を理解しての役割の徹底。誰かに依存することなく、自らの力を発揮すれば、残り試合での得点力向上はいくらでも可能だ。日替わりオーダーが、リーグ連覇の要因となるかは、起用される選手たち次第だからこそ、「使ったこっちの責任。思い切ってやってほしい」と中嶋監督も常に言ってきた。そんな指揮官は新型コロナによる離脱の直前には、こうも言っている。
「今はもう、すべて勝ちにいくイメージで行かないといけない。今までやってきたことを、全部出せるように戦うだけかなと思います。オレが気負っても、やるのは選手。やってもらいましょう」
泣いても笑っても残り1カ月──。逆転でのリーグ連覇を全員でつかみ取るだけだ。
■8月26〜28日、西武3連戦(京セラドーム)のスタメンと試合結果 
※△は左打、□は両打