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廣岡達朗連載「やれ」と言える信念

廣岡達朗コラム「村上宗隆はなぜ打てなくなったのか? 今後の焦点は巨人が誰をクビにするかだ」

 

上体に力が入っている



 ヤクルトの村上宗隆は王貞治(巨人)に並ぶシーズン55号を打って以来、快音が聞かれなくなった。この原稿はヤクルトが残り1試合を残す時点で書いているが、不振の要因はどこにあるのか。

 村上の良い点は、体の真ん中に重心を置いて、どちらかといえばステップは広いが、投手に向かって体を寄せて打つことだ。それが、ステップしながら重心を捕手寄りに残すから体が傾いていた。

 分かりやすくいえば、二塁に盗塁するときに、上体だけ二塁ベースへ向かっていて、下半身がついていかないのと同じ。重心が二塁へ向かってその動きに遅れないように上体も二塁へ向かえば成功する。そういうことを知らない指導者が多い。

 もうひとつ、55号を打ってからの村上は上体に力が入っている。だから球に力が加わらない。

 無理もない。あの王ですら55号の記録がかかったときには足踏みした。心身統一合氣道の藤平光一先生に相談したところ「上体に力が入り過ぎている」と気が上がらないように臍下(ヘソの下)の一点に鎮めることを教わった。

 私なら「いままでどおりに打てば間違いなく打てる」と村上に暗示をかけていた。あるいは、このまま日本選手新記録を達成せずにシーズンを終えたほうがテングにならなくていいかもしれない。

野球そのものの質を貶めているCS


 今季のヤクルトはリーグ連覇を果たした。元監督として祝福したいが、本当はシーズンに勝ったぐらいでビールかけをやるべきではない。クライマックスシリーズ(CS)を控えるこれからが大変なのだ。勝負事を安易に考え過ぎている。もっと緊張感を持ち、祝勝会をやりたい気持ちをグッと我慢して、CSで勝ってからやればいいのだ。

 CSという制度には私は一貫して否定してきた。こういう制度を認めているコミッショナーの気が知れない。野球を何だと思っているのか。勝つための努力が認められない世界がどこにあろうか。CSがあれば消化ゲームが減り観客が入るという目先の興行的利益だけ。野球そのものの質を貶めていることにいい加減気づくべきだ。

安住していたら成長はない


 巨人は4位で終わった。ルール違反ではないとはいえ、他球団のクリーンアップを獲って4位という結果ではお話にならない。野球というのは一発長打で決めるものではない。相手投手を苦しめるために単打、長打、犠打を絡めて勝つ。それこそが野球である。

 今後の焦点は巨人が誰をクビにするかだ。原辰徳監督が「4位になった責任を取って勉強し直します」と辞任すれば大したもの。昔の巨人なら4位になった時点で監督はクビである。原監督が「勝てない球団へ行って、そこで選手を教え、教えることを通して自分も教わりながら、鍛えて勝たせます」と言えば、見どころがある。原監督が何億円をもらっているか知らないが、お金を保障されているからといって安住していたらさらなる成長はない。

 そういうことを言う評論家がいまはいない。監督、コーチがクビになった人間が評論家として偉そうに喋っているケースが多い。球団に必要な人材ならなぜクビになるのか。私は不満で仕方がない。

 とにかくチームが勝てないのは自分に欠陥がある、ということを監督は知るべきだ。自分自身を良くするために、現状の結果が出ているのだと思えば、やることも変わってくる。

PROFILE
廣岡達朗/ひろおか・たつろう●1932年2月9日生まれ。広島県出身。呉三津田高、早大を経て54年に巨人入団。大型遊撃手として新人王に輝くなど活躍。66年に引退。広島、ヤクルトのコーチを経て76年シーズン途中にヤクルト監督に就任。78年、球団初のリーグ制覇、日本一に導く。82年の西武監督就任1年目から2年連続日本一。4年間で3度優勝という偉業を残し85年限りで退団。92年野球殿堂入り。
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