
先頭打者本塁打に続いてサヨナラ弾を放った万波は、チームメートにもみくちゃにされてもなお、喜びを爆発させていた[写真=川口洋邦]
まさに万波で始まり、万波で終わった。エスコンフィールド北海道は「万波劇場」と化した。9月16日の
ソフトバンク戦、
日本ハムの
万波中正は初回に先頭打者として打席に入ると、相手先発・
石川柊太が投じた8球目のパワーカーブを右翼ポール際のブルペンに運ぶ21号の先頭打者本塁打。
新庄剛志監督も「向こう(右方向)に持っていける。最高!」と絶賛する一発で先制点をもたらした。
9月3日の
オリックス戦(エスコンF)から一番での起用が続く。言うまでもなく指揮官からの「ホームラン王を獲れ!」というメッセージだが、9月に入ってバットは湿っていただけに、万波自身も「チームに勢いをつける1打席目がなかったので、そういう意味でも良かった」と笑顔を見せた。
ハイライトは1対1の同点で迎えた9回だ。一死から九番・
五十幡亮汰が三塁へのセーフティーバントで出塁。一塁で交錯して負傷交代を余儀なくされながらもぎ取ったサヨナラのランナー。新庄監督が「あれが(万波を)燃えさせた」と言えば、万波も「イソさん(五十幡亮汰)が体を張って出塁してくれた」と気合をみなぎらせていた。
だが、万波の頭の中は冷静そのもの。「ゲッツー狙いの配球で来ると思っていた。インコース、シュート系、どんぴしゃだった」。
オスナが投じた内角への153キロのストレートを一閃(いっせん)。打った瞬間それと分かるすさまじい打球に、スタンドは大絶叫に包まれる。左翼2階席へと突き刺さる特大の22号サヨナラ2ラン。「鳥肌が立ちながら、ビリビリしながら一周してました」と、ゆっくりダイヤモンドを回り、最後はホームベース上でチームメートに手荒い祝福を受けた。
先頭打者本塁打&サヨナラ本塁打を同じ試合でマークしたのは、1993年の
アロンゾ・パウエル(
中日)以来となる史上2人目、パ・リーグでは初の快挙だ。その事実を聞くと万波は「最高! うれしいです!」と再び破顔した。22本塁打は同日時点でトップを走る
ロッテの
ポランコに2本差。
「めちゃくちゃ意識して、ホームランを打ちたいと思ってやっている。自分にとっていい挑戦になっている」という23歳の大砲が、北の大地から初戴冠へ向け、さらに加速していく。