出場機会を得るために、生き残るために──。ポジションを問わず、いつでもどこでも守れることは、細谷圭にとって重要なストロングポイントだ。そのために、複数のグラブが必要になる。 取材・文=杉浦多夢、写真=阿部卓功、BBM 出場機会を得るために求めるのは安定感
勝負の11年目。サードが主戦場だった男は、春のキャンプで真新しい外野手用グラブを持ち込んだ。
「どこでもまず出ないと。(外野は)もらったチャンスだと思って取り組みました」

春のキャンプから外野にも取り組む中で、すっかり手になじんだ外野手用グラブ。これで三塁守備もこなす
開幕3試合目でチャンスをつかむと、一時は首位打者に立つ活躍。結局、任されたポジションは本職のサードだったが、その手にはキャンプですっかりなじんでいた外野手用グラブがはめられていた。
「オープン戦で『明日は三塁で』と言われたときに、内野手用で練習したら『あれ、短いな』と。自分の中で違和感があった」
外野手用でもゴロの捕球は問題ない、握り替えも難なくこなせる。であれば、しっくりとくる感覚と安定感のほうが重要だった。同時に、通常のものよりも長くした新たな内野手用グラブも作製。練習ではそのニューグラブを慣らしながら、移行を図っている。

内野手用グラブは外野手用の長さの感覚を取り入れてカスタマイズされている
11年目の覚醒も、確固たるレギュラーをつかんだわけではない。徐々にバットが湿るとベンチを温める日が続き、次にチャンスを手にしたとき、与えられたポジションはファーストだった。内野のユーティリティーは持ち味のひとつであり、試合出場のための手段でもある。もちろん自分のファーストミットも持っているが、手にしたのは“Takeshi”と刺繍されたミットだった。
「(一軍内野守備・走塁コーチの)松山(秀明)さんから『三木(亮)の持ってるやつはええぞ』と言われたので借りたんです。もともとは金澤(岳)さんのものなんですけど」
フィットしたポイントは捕球面の広さとポケットの緩さ。遊びがある分、特にショートバウンドでポケットのどこかに当たれば、そのまま引っ掛かって転がるようにポケットの中へと収まる。こちらも現在、“金澤モデル”をベースに自分専用のミットを作製中だ。

外野手・内野手用グラブとは違いファーストミットに求めるのはポケットの自在性と捕球面の広さ。前者が縦型だとしたら丸型のようなイメージになる
ファーストでの出場機会が増えるにつれ、その奥深さ、重要性を強く感じるようになっていった。
「王(貞治)さんが『ファーストは内野の女房役』というようなことをおっしゃっていて。まだほんの始まりの部分ですけど、その意味が分かるようなプレーもありました」
QVCマリンの内野人工芝は「微妙に弾まなくなる部分がある」という。だから送球を受けるときはグラブと顔の高さを合わせ、地面につくようなイメージで低く構える。「できるだけ早く捕ってあげたい。そうすればピッチャーも、チームも助けることができる」と、股割の技術も新たに習得した。
自らの出場機会のために、そしてチームのために。これからも複数のグラブを使い分けながら、さまざまなポジションで細谷の躍動する姿を見ることができるだろう。
PROFILE ほそや・けい●1988年1月17日生まれ。182cm84kg。右投右打。群馬県出身/太田市商高-
ロッテ06年4位=11年