リベンジのときが来た。
梵英心が徐々にアクセルを踏み込み始めている。4月後半に打順が一番に定着して以来、打撃に力強さが戻ってきた。
5月2日の
巨人戦(東京ドーム)、2点リードの5回に先頭打者として打席に入った。3ボール1ストライクのバッティングカウント。巨人先発・ホールトンの甘い直球を、前のめりになりながら引っ張った。「打った瞬間、良い手応えだった。コンパクトにバットを出せた」。試合を決める白球が、左翼スタンドに着弾した。
開幕直後は、打撃で苦しんでいた。結果を求めるばかり、早打ちになり凡退を繰り返す悪循環。4月中旬まで打率2割前後をうろうろする状態が続いた。東出と一、二番で入れ替わりを繰り返し、高野手チーフコーチが「固定できるのが一番いいんだけど」と話すよう、首脳陣の頭を悩ませていた。だが、復活の兆しを見せ勝負の交流戦では戦える状態になりつつあり、「良い状態が続けばいいね」。
昨季は“地獄”を見た。チームは6勝16敗2分で交流戦最下位に沈み、5月26日の
西武戦(マツダ
広島)からは、50イニング連続無得点のセ・リーグワースト記録を更新。交流戦10連敗も、リーグ記録となった。自身も79打数10安打で打率.188とバットが湿り、責任を感じざるを得なかった。6月1日の
楽天戦(Kスタ宮城)では、2009年の野村監督就任以来、初めてスタメンを外れる屈辱も味わった。
負の連鎖は続いた。交流戦明けの6月29日
阪神戦(福井)で自打球を受け、左膝しつ蓋がい骨こつ骨挫傷。残りのシーズンをリハビリに費やした。今季に期する気持ちは誰よりも強い。1年越しの思いをぶつける。