
芸術的な「福田のバット投げ」
夏が来れば思い出す。昨季、気温の上昇とともに
福田永将のバットが“ハンマー化”した。右肩痛の影響で出遅れ、本格稼働は7月以降。それでも、球宴後のペナントレース再開から8月末までに13本塁打と火を噴き、年間18本塁打の7割超をこの期間でマークした。
和製大砲の覚醒。大きな期待を背負った今季は、もどかしい状況が続いている。打球が上がらず、打率も伸びない。スタメンから名前が消える試合もある。それでも、復調の兆しは見えてきている。
6月9日、ナゴヤドームでの
ソフトバンク戦。
バンデンハークの直球をとらえた打球が左中間席に吸い込まれた。「今年一番の当たりです。なかなか打球が上がっていなかったので、何とか上げようと思っていた」。代名詞のバット投げも美しく映える。5月15日の
広島戦(ナゴヤドーム)から実に21試合、82打席ぶりに飛び出した放物線は、福田本来のものだった。
長いトンネルを抜けると、翌10日(同)には外角直球を右翼席に放り込んだ。2試合連続の一発は、復調へのサイン。なかなか上がらなかった打球がようやく上がり、アーチストらしい弾道が伸びる。森監督も「福田にはああいう本塁打を頭で描きながら見ている。久しぶりだな」と目尻を下げた。
苦難の春が終わり、時季は梅雨から夏へと向かう。2戦連発後は再び一進一退。本調子が近くて遠い状態が続いている。上昇の余地は十分。「まだまだ(打球の)角度は上がっていくと思う」。夏男の本領は、もう間もなくだ。
写真=BBM