
セーブ王(37セーブ)に続き、胴上げ投手にもなった森
激動のシーズンを締めくくるマウンドに、
森唯斗が駆け上がった。2年連続の日本一に王手をかけて迎えた日本シリーズ第6戦(11月3日)。逆転へのわずかな望みに懸ける敵地マツダ
広島の悲痛な叫びを、森はクールにかき消した。2点リードの9回。
菊池涼介、
丸佳浩、
鈴木誠也を3人斬りで、リーグ2位からの下克上を完結させた。「本当にうれしい。最後まで投げさせてもらったことに感謝」。思えば遠い道のりだった。
1年目から50登板超を続けて臨んだプロ5年目。中継ぎの一角として開幕を迎えた。間もなくセットアッパーの
岩嵜翔が右ヒジ、絶対的抑えの
サファテが右股関節を痛め、立て続けに離脱。森自身「まさか」と言うクローザーの役目が巡ってきた。
サファテと同じようにはいかなかった。前半戦だけで自己ワーストタイの3敗。「完璧に抑えなきゃ」。自分にかけた重圧が苦戦に拍車をかける。ことごとく球を打ち返され、強気の塊が「どうしていいか分からない」時期もあった。それでも、思い切ってオールスターゲームで試した。テークバックの力を抜き、フォロースルーに注力。途端に打者が差し込まれ始めた。「いける」。手応えは本物だった。黒星は8月11日が最後。独走する
西武を猛追する大前提になった。
日本シリーズ6戦5登板の数字が雄弁だ。サファテへの敬意は変わりないが「リリーフで一番に」との自覚も芽生えた。秋季キャンプはノースローで疲労回復に努めた。来季も投げ抜くことだけを考える。
写真=BBM