9月19日の広島戦(横浜)では起死回生の同点満塁弾を右翼スタンドに運んだ
苦難を乗り越えた男がまた、輝きを取り戻そうとしている。
梶谷隆幸の狙いはレギュラー一本だ。「1年1年が本当に勝負なので。攻守走、すべてでアピールしないといけない」。プロ13年目は41試合で打率.215、5本塁打、15打点。出場試合数は昨年と同じでも、下を向く様子は一切なかった。「プロとしてどうなのか……。毎日がものすごいストレスだったので」と一大決心したのが昨年8月。
5メートル程度のキャッチボールですら痛みを感じていた右肩の手術に踏み切った。地道なリハビリを経て、今季は開幕スタメン。オープン戦での調整を挟まず、サプライズ的要素を含めた抜てきでもあった。
開幕3連戦を最後に先発から外れると、出場機会は激減した。5月6日に2度目の出場選手登録抹消。同じ外野で神里らにメドがついたこともあり、そこから3カ月半のファーム暮らしを強いられた。もっとも心配された右肩の状態は良好。消極的な言葉はぐっとこらえ、いつか来る出番を待ち続けた。再昇格した8月23日の
巨人戦(東京ドーム)は「一番・右翼」で1号2ラン。31歳、ベテランの意地だった。
9月19日の広島戦(横浜)では代打同点グランドスラム。4点を追う6回一死満塁から、プロ通算100本塁打が逆転勝利の呼び水となった。今オフは大黒柱の筒香がメジャー挑戦を表明。背番号「3」へかかる期待は大きい。2014年に盗塁王を獲得し、17年は「20発&20盗塁」をクリアした実力者。再浮上の予感だ。
写真=BBM