変化球のキレは健在だ
伝家の宝刀、と呼ぶにふさわしい1球だった。8月27日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)。初回二死走者なし。
中村奨吾への4球目。
田中将大が勝負球に選んだのはスプリットだった。142キロの落ちる球で、空振り三振に仕留めた。7回を投げ3失点。日本球界復帰後、ロッテの敵地で勝ったのは初めてだった。今季8勝目を飾ったが、自己採点は厳しかった。「全体的にいまいちでした」と淡々と振り返った。
今年で34歳を迎える。直球の平均球速は140キロ後半と20代と比べてやや落ちた印象だが、スプリットのキレは相変わらず素晴らしい。直球との球速差は5キロほど。ストレートとまったく同じ腕の振りから繰り出される変化球は、打者の手前で沈み込む。状況によって握りなどを微妙に変えて落差を調整。制球力も含め、まさにウイニングショットだ。
その宝刀の秘けつは
松井裕樹ら後輩たちにも伝授。日本球界復帰後、スプリットの詳細を伝授された1人が
引地秀一郎だ。引地はこれまでは挟み込むように握っていたというが「もう少し真っすぐのような握りのほうがいい」と助言を受けた。また本人は「しっかりとした(軌道の)イメージを持って投げている」という。1球ごとに球筋をしっかりイメージしてから投げることが、精度の高さの秘密だ。
8月までを終えた時点で20試合に登板して8勝9敗、防御率2.93。本人としても心から満足できる成績ではないだろう。自慢の宝刀を武器に、終盤戦で一つでも多くの勝利をつかみ取る。
写真=BBM