8月は岡林勇希の野球人生に残る1カ月だった。13日の
広島戦(バンテリン)。先頭打者で迎えた初回だった。カウント3-1から広島の先発・
遠藤淳志の144キロ直球を振り抜くと、「捕られるかな」という打球は詰まりながらも左前で弾んだ。
連続試合安打が26となり、1949年に
西沢道夫さんがマークした25試合連続安打の球団記録を74年ぶりに塗り替えた瞬間だった。
「毎試合必死で積み重ねてきたことが、結果に結びついてうれしい。偉大な方の記録を超えられて本当に光栄です」
一塁に到達すると、場内アナウンスで球団の歴史に新たな名前を刻んだことが告げられ、花束が渡された。もちろん本拠地の竜党から割れんばかりの歓声が注がれた。
「2年連続」も現実味を帯びてきた。昨季初めて獲得した最多安打。今季は4〜6月は月間打率2割台だったが、夏場に急上昇。7月にリーグトップの.382をマークすると、歴史を塗り替えた8月も安打を積み重ね、
牧秀悟(
DeNA)、
中野拓夢(
阪神)らと激しい争いを繰り広げている。
それでも本人は「数字にはあまり興味がありません」とどこ吹く風。そんな岡林が唯一掲げている目標は全試合フルイニング出場だ。開幕から継続しているのは12球団では阪神・中野拓夢と2人しかいない。最後の最後までグラウンドに立ち続けるつもりだ。
チームは大きく負け越し、最下位に低迷している。「目の前の試合に勝つためにどうするかだけです」。未来への期待を一身に背負って、岡林が打ち続ける。
写真=BBM