
守備だけでなく、一番打者として攻撃に勢いをもたらしている牧原
顔触れが固定されている
ソフトバンクのレギュラーにあって、二塁は数少ない併用ポジションだった。それが球宴前後から一気に、一人の居場所にしてしまわんばかりだ。
「自分でも怖いくらい結果が出ている。でも自分に期待しすぎないように。『一日一善』と決めています」
牧原大成、プロ8年目の夏に猛っている。
昨年6月に右肩を痛めた。前兆があったわけでもなく戸惑った。症状は尾を引き、今春キャンプもB組。「こんなに長いリハビリ生活は初めてだった」。シーズン開幕。いつかは、と思っても、一軍から声はかからない。同じような立場の選手の一軍昇格を横目に、じれるような思いだった。
7月に入ってようやく今季初昇格。すると同月打率.375、プロ1号を含む2発のロケットスタートだ。主力以外は相手先発の左右でスタメンが入れ替えられるのがソフトバンクの常だが、8月も好結果を残し続けるうち、それも減っていった。
外野守備もこなす。外野の誰かが途中交代すれば、代わって外野を守り、二塁は豊富な手駒で埋める。そうしたフレキシブルな戦いを、牧原の存在が可能にしている。仮にベンチスタートでも足があり、守備がある。
「試合の中で何か一つ。安打でも四球でも、打てなければ走塁や守備でいいプレーをしようと。レギュラーじゃない。2、3試合結果が出なければ終わってしまう可能性がある。まずは、いかに一軍に残り続けられるか」。
辛酸をなめた男。あどけない顔の奥に、したたかさを秘めている。
写真=湯浅芳昭