
16年から大和高田クラブを指揮する佐々木監督は、選手の手によって宙を舞った[写真=矢野寿明]
「出場辞退」の無念乗り越えV
クラブチームの日本一を決める第46回全日本クラブ野球選手権大会の決勝が8月29日、等々力球場で行われ、大和高田クラブ(奈良)が8対7で全足利クラブ(栃木)を破り3大会ぶり5度目の優勝。10月に京セラドームで開幕する日本選手権の出場権を獲得した。
16年から大和高田クラブを率いている
佐々木恭介監督(元近鉄監督)は優勝インタビューで「昨年は悔しい思いをしたが、みんな本当にありがとう」と選手たちに声を掛けた。
悔しい思いとは昨年5月、全国クラブ選手権の大会直前に新型コロナウイルスの陽性者が確認され、出場辞退を余儀なくされたことだ。目標を失い、「選手のモチベーションが下がり、立ち直るには時間がかかった」と佐々木監督。それでも「前を見て進めるように叱咤し、尻をたたき続けました」と指揮官は振り返る。
今里征馬主将(拓大)も「一昨年は大会自体がコロナ禍で中止になっていたこともあり、かなり落ち込みました。でも、みんな『全国で勝ちたい』という同じ思いで集まっているので、また一丸となって戦うことができました」と、今季は気持ちを切り替え、予選を突破。だが、全国大会を前にまたもコロナ陽性者が現れ、練習が休止。再開したのは開幕の2週間ほど前からだったという。今里主将も「試合勘に不安があった」と話すが「都市対抗の予選で得点が取れなかったので今大会はチームとして相手投手の攻め方を徹底し、1試合ごとに成長していきました」とトーナメントを勝ち上がっていった。
用意してきたプレーを実践
優勝をかけた一戦は、この大会を11度制覇し前年王者でもある全足利クラブと対戦。決勝で顔を合わせるのは3度目でこれまでは1勝1敗と、まさに東西を代表する強豪同士の大一番となった。試合は同点で迎えた7回裏に二死満塁のチャンスを作った大和高田クラブ。ここで投手が二塁へけん制球を送った瞬間、二塁走者とともに三塁走者がスタートし、遊撃手がボールをこぼす間に生還。相手のピックオフプレーを逆に利用したこの走塁は、実は昨年の全国大会前から準備してきたもので「なかなか試す機会もなかったが一発で成功した」(佐々木監督)と、貴重な勝ち越し点を挙げた。さらに、ここから満塁と攻め立てると「落ちる球に対応するため、全員が打席の投手側に立っていましたが終盤にやっと打ち崩せました」(今里主将)と打線が爆発。松本凌太(拓大)の2点適時打と西脇雅弥(龍谷大)の3ランで一気に突き放した。
全足利クラブも粘り、9回表は1点差に詰め寄ってなおも一死満塁としたが、ライトフライで本塁を狙った三塁走者が刺されてゲームセット。3時間9分に及ぶ手に汗握る熱戦は、劇的なプレーで幕を閉じた。
最高殊勲選手賞は決勝でタイムリーを放ち、最後はライトから好返球を見せた松本が受賞し「チームに貢献できて良かった」と満面の笑顔。そして、今里主将は日本選手権に向け「4年前は1勝しましたが、企業チームを倒して2勝、3勝としていきたい」と抱負を語った。雌伏の時を経て、クラブチームの頂点に立った大和高田クラブ。その戦いは続く。(取材・文=大平明)