
10月2日、JR四国戦で本塁に生還し、ハイタッチを交わす徳島・村川[写真=佐藤友美]
ドラフト6日前、徳島のドラフト候補、
村川凪外野手(四日市大)は、大きな不安の真っ只中にいた。
「寝る前はよく考えます、毎日。僕も初めての経験なので。調査書をもらうことも初めてですし……」
40盗塁でタイトルを獲得した韋駄天(いだてん)に、6球団から調査書が届いていた。
最後のアピールの場となったのは10月2日、JR四国との交流戦(徳島市)だった。一番・中堅手として出場している。
若い選手を中心に先発メンバーが組まれた。今季、レギュラーとして活躍した野手は、村川を含め5人しかいない。自身のアピールよりも、やらなくてはいけないことがあった。
「(レギュラーで)出ていたメンバーが、試合を引っ張らないとなっていう気持ちはありました」
すでに緊張のピークは過ぎている。それが最も大きかったのは、9月13日の対香川戦(徳島市)だった。
前夜に球団スタッフから「明日3球団が最後の視察に訪れる」と連絡があった。香川の先発はエース、
近藤壱来(三菱自動車倉敷オーシャンズ)である。簡単に打てる投手ではなく、けん制で刺されたことも少なくない。
「変に転がして走ろうとか思わずに。スカウトに足を見せようとかじゃなくて、“楽しむ”じゃないですけど、思い切ってやろうっていう気持ちで」
この試合で3安打1打点1盗塁と結果を残している。
21日の対高知戦(越知町)もそうだった。高知先発、
宮森智志(流通経済大)への最終確認も兼ねて、スカウトが訪れている。ここでも3安打、3盗塁と持ち味を発揮した。
そして対JR四国戦。凡打でもしっかり走る。声を出して盛り上げる。そんな前向きな姿勢が、2安打1打点の活躍につながっている。
「スカウトの方が見に来てくれた試合は、いい結果が出てるっていうのは自分の中にあったので。なんとかなるだろうって思っていました」
この1年で、すべてがレベルアップした。大学時代に比べて、より強くなったなという自負がある。
ドラフト前の土日はオフだ。長い2日間が終われば、運命の朝が来る。
母・真琴さんから「もう夢にも出てくる!」と電話があった。父・豊則さんも、ネット上で『村川凪』の名前を探しては一喜一憂している。
この記事が出るころ、そんなエピソードが笑い話になっていることを祈っている。[リポート/高田博史]