先発した右投手は突然、制球を乱し、連続2四球を与えました。ここで苦手とする左打者が登場したので、その投手をいったん左翼へ回し、左投手を救援のマウンドに送りました。すると攻撃側は、右打者を代打に送り出したので、左翼に入れた投手を打球が飛んでくる可能性が少ない右翼へ回そうとすると、球審から交代できないと断られました。これはなぜでしょうか。 野球規則3.03の[原注]に
「同一イニングでは、投手が一度ある守備位置についたら、再び投手となる以外他の守備位置に移ることはできないし、投手に戻ってから投手以外の守備位置に移ることはできない」 と明記されているからです。
77年から3.03にこの[原注]が追加されました。つまり、投手から左翼に移ったあと、再び投手に戻るのは差し支えありませんが、同じイニングに左翼からほかのポジションへ移ることはできないのです。
この規則が追加された翌年の78年に、
巨人の
小林繁投手が投球中に2度ほど右翼に移ったことがあります。4月20日の
阪神戦の5回と、5月23日の大洋戦の4回で、いずれも右下手投げの小林にとって苦手とする左打者を打席に迎えたときです。
小林を救援したのは
角三男と
小俣進の両左腕投手でした。この2人のスピードならば、打球はセンターから左へしか飛ばないだろうとの首脳陣の計算で、小林は右翼に回ったとのことです。
このケースだと、たとえ右翼に痛烈な打球を打たれたとしても、もはやポジションの変更はできないのですから、投手をほかのポジションに回すときには、よく考えてから守備位置を決めなくてはなりません。
ただし、これはプロ野球で適用される規則であって、アマチュア野球に関しては、各所属団体の規定に従ってください。