打者が三塁ファウルラインをわずかに切れていくゴロを打つと、三塁走者は審判が「ファウル」と判定(宣告)する前にこのボールをファウルエリアで拾い上げ、目の前の三塁塁審に渡しました。三塁手は遊撃よりに守っていたので、たとえフェアになっていたとしても守備機会はなかったと思われます。しかし、塁審は走者にアウトを宣告しました。どうしてでしょうか。 三塁塁審のアウトの宣告は正しいものです。打者または走者によるインターフェア(妨害)の項目を並べた規則6.01(a)の(2)にはこう記されてあります。
「打者または走者が、まだファウルと決まらないままファウル地域を動いている打球の進路を、どんな方法であろうとも、故意に狂わせた場合」 このインターフェアに対するペナルティとして、走者はアウトとなり、ボールデッドになると決められています。
83年6月15日の
巨人対
阪神(後楽園)のことです。6回裏の巨人の攻撃のとき、二死一、三塁で代打の
平田薫が三塁線のファウル地域に転がる打球を打つと、三塁走者の
原辰徳はホームへスタートしたついでにこの打球をつかんで、ボールボーイにトスしてしまいました。
まだ審判がファウルを宣告する前だったので、阪神の
安藤統男監督から「バウンドが変わってフェアになったかもしれない。インターフェアで原をアウトにすべきだ」との抗議が出されました。
これに対して審判団は「厳密には守備妨害かもしれないが」としながらも「ラインから1メートル近くも外れた明らかなファウルだから」と言ってそのままになりましたが、阪神側の言い分が正しいのは明白です。原選手はまだプロ入りして3年目。若かりし日のボーンヘッドでした。