週刊ベースボールONLINE

伊原春樹コラム

野茂、伊良部クラスの剛腕!迫力ある直球とキレ味鋭いフォークで相手を牛耳る若タカ右腕のすごさ

 

 彼のストレートとフォークで相手を牛耳るスタイルは野茂英雄(元近鉄ほか)、伊良部秀輝(元ロッテほか)に匹敵するのではないだろうか。誰のことかというと、ソフトバンクの6年目右腕・千賀滉大のことだ。今季2勝目を挙げた4月13日の西武戦(県営大宮)でも、素晴らしいピッチングで西武打線を翻ろうした。

4月13日の西武戦で10三振を奪い、今季2勝目を挙げた千賀/写真=内田孝治


 186センチの長身から投げ下ろすストレートは常時150キロ以上をマークし、打者のタイミングを外すカーブの曲がりも大きい。さらに打者の打ち気がはやったところでキレ味鋭いフォークを投じる。ストレート、変化球ともに一線級のレベルにあるが、特にこのフォークが打者からすると厄介だ。例えばフォーク対策として、「ヒザから下の低めのボールには手を出すな」と指示を出しても千賀の途中までストレートと見まがう軌道を描くからそれもなかなか難しい。攻略するには数少ない失投を逃さずにとらえるしかない。

 ここぞというときに三振を取れる投手。パ・リーグで奪三振数上位3人を見ていくと4月18日現在、楽天則本昂大が42三振(30投球回)、日本ハム大谷翔平が30三振(29投球回)、千賀が25三振(23回2/3)と名を連ねているが、いずれも常時150キロ前後のストレートを投げ込み、追い込んでからチェンジアップ、フォークなどの落ちるボールを持っている。同等の能力を発揮できるクローザーはいるが、千賀らは先発として長いイニングでマウンドに立つ。それだけ精神的、肉体的にも優れている証明だ。

 さらに千賀は例えば大谷よりも緩急を駆使できるだけに、打者にとってより対応が難しいところがある。冒頭で「野茂、伊良部クラス」と書いたが、ソフトバンクの前監督である秋山幸二が西武時代、野茂を苦手としていた。追い込まれると判で押したようにフォークで空振り三振に仕留められていたのだ。冗談で秋山に「追い込まれたらバットを振るな。全部ボールになるんだから」と言ったことがあるが、千賀もそれくらいの域に達しているように思う。

 結局、千賀は西武戦で8回までゼロに抑え、プロ初完封を懸けて9回のマウンドに上がったが秋山翔吾にタイムリーを浴びて1点を取られてしまったものの見事なプロ初完投勝利。ヒーローインタビューでは、このウイニングボールを「自分への戒めとしてちゃんと飾っておきます」と言っていたが、興奮した様子もなく、ピッチング同様に冷静な受け答え。ますます、さらなる成長に期待が持てる。

 セ・リーグでも三振を奪える本格派として阪神の左腕・岩貞祐太が台頭してきた。セの奪三振1位(21回2/3で34奪三振)だ。2014年のドラフト1位で1、2年目はそこそこストレートは良かったがコントロールに難があった。だが、今年はその点も改善され、右打者に対しても懐を突き、決め球としてシンカーを外へ落とすスタイルを確立。16日の中日戦(ナゴヤドーム)では7回まで無失点もリリーフ陣が攻略されるなど、勝利には恵まれないが、1枚足りなかった阪神先発陣の救世主となるのではないか。

PROFILE
いはら・はるき●1949年1月18日生まれ。広島県出身。北川工高(現・府中東高)から芝浦工大を経て、71年ドラフト2位で西鉄入団。76年巨人に移籍し、78年古巣ライオンズに復帰して80年限りで現役引退。通算成績は450試合出場、打率.241、12本塁打、58打点。81〜99年に西武で守備走塁コーチを務め、西武黄金時代の名三塁コーチとして高い評価を受ける。2000年阪神コーチ、01年西武コーチから02〜03年西武監督、04年オリックス監督を歴任。07〜10年巨人ヘッドコーチを務め、14年は西武監督。現在は野球解説者として活躍している。
伊原春樹の野球の真髄

伊原春樹の野球の真髄

座右の銘は野球道。野球評論家として存在感を放つ伊原春樹の連載コラム。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング