
「アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」で日本を頂点に導いた井端監督[左。写真=高塩隆]
野球を知っている玄人好みの人選だったが、それがベストだったと思う。11月16日から19日の間、東京ドームで開催された「アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」で日本を頂点に導いた
井端弘和監督だ。今年3月のWBCで
栗山英樹監督率いる侍ジャパンが3度目の世界一に輝いた。偉業を遂げた栗山監督は退任。後任がなかなか決まらなかったが、井端監督に白羽の矢が立った。
現役時代は
中日で遊撃手として7度、ゴールデン・グラブ賞を獲得。主に二番として打線のつなぎ役を担った。引退後は
巨人、NTT東日本でコーチを務め、監督としてU-12代表を率いて“対世界”の経験も豊富。派手さはないが、ディフェンス中心に守りを固め、相手より1点でも多く奪う野球が真骨頂を発揮した。
最も井端監督らしい采配が見られたのは決勝の韓国戦だろう。日本は3回に2点を先制されたが、5回に
牧秀悟(
DeNA)のソロ、6回に
佐藤輝明(
阪神)の中犠飛で同点に追いついた。投手陣も踏ん張り、2対2の同点のまま9回を終えた。延長は無死一、二塁から始まるタイブレークだ。10回、日本は韓国の攻撃を1失点で切り抜け、その裏、三番・
森下翔太(阪神)に「ピンチバンター」として
古賀悠斗(
西武)を代打に送った。
井端監督はタイブレークに突入した際の「ピンチバンター」の可能性をあらかじめ古賀に告げていたというが、このように役割を明確にして、心の準備をさせておくのは非常に重要なことだ。
私の経験で言えば2002年、西武監督時の開幕戦(札幌ドーム)、打線が
ロッテ先発・ミンチーの前に4回まで1人のランナーも出せなかった。しかし、5回裏、先頭の
カブレラが三塁内野安打で出塁すると、続く和田の打席でヒットエンドランを敢行。作戦は的中して、無死二、三塁からマクレーンが先制打を放った。これが奏功し、西武は3対2で勝利を収めた。このとき、私は監督を務めながら攻撃時はコーチャーとして三塁コーチスボックスに立っていたが、和田には前もってカブレラが出塁したらヒットエンドランのサインを出すことは伝えていた。このような細かい気配りをすることが監督には大切だ。
古賀は1球でバント成功。牧は申告敬遠で一死満塁となると
坂倉将吾(
広島)の中犠飛で同点、
門脇誠(巨人)の左前打で日本はサヨナラ勝ちを収め、優勝を飾った。こういった戦い方を見るにつけ、井端ジャパンの未来が非常に楽しみになる。
話は変わるが11月23日、大阪、神戸の両市で阪神、
オリックスの優勝パレードが行われた。午前、午後で会場を入れ替えて実施されたが、延べ100万人のファンが訪れ大盛況だった。私もテレビを通して、その模様を見ていたが沿道に詰めかけたファンの誰もが笑顔。選手の心に残ったことだろう。
ただ、大阪府・市の職員約2500人が「ボランティア」として来場者の誘導などにあたっていたという報道が一部でされた。個人的には“祝賀”に水を差さなくても……という思いだ。
PROFILE 伊原春樹/いはら・はるき●1949年1月18日生まれ。広島県出身。北川工高(現・府中東高)から芝浦工大を経て、71年ドラフト2位で西鉄入団。76年巨人に移籍し、78年古巣ライオンズに復帰して80年限りで現役引退。通算成績は450試合出場、打率.241、12本塁打、58打点。81〜99年に西武で守備走塁コーチを務め、西武黄金時代の名三塁コーチとして高い評価を受ける。2000年阪神コーチ、01年西武コーチから02〜03年西武監督、04年オリックス監督を歴任。07〜10年巨人ヘッドコーチを務め、14年は西武監督。現在は野球解説者として活躍している。