大学野球も「投手分業制」の時代となっているが、救援投手は相当な精神力が必要だ。神宮のブルペンで待機する左腕。勝利のために、マウンドに上がる。そして、その先に大きな目標がある。 取材・文=佐伯要 写真=田中慎一郎 
マウンド上では気迫を前面に出す。思いをボールに乗せていく
糧となっている1球がある。昨春のことだ。立大の148キロサウスポー・
宮海土は開幕から抑えを任され、5試合で計10回を投げて14奪三振、無失点と完ぺきな投球を見せていた。
ところが……。慶大2回戦で同点の7回から救援すると、8回に2四球で二死一、二塁のピンチを招いた。打席には、四番の
正木智也(現
ソフトバンク)。「ここは抑えるしかない」と、1ボールから143キロの直球を投げ込んだ。だが、左中間へ3ランを打たれ、敗戦投手になった。この1敗で、チームは優勝争いから後退した。宮は苦い表情で振り返る。
「あの1球で優勝を止めてしまった。それまでは、打たれても気にしないようにしていたんです。抑えは、厳しい場面で1点を守り切るのが仕事。1つずつ気にしていたら、もたないので。でも、あのときはさすがに精神的にキツかったですね」
1球の重みを知った。仲間からの信頼を実感していただけに、責任も背負い込んだ。そんな宮を、中継ぎ投手の栗尾勇摩や主軸打者の東怜央(現日立製作所)ら4年生が励ましてくれた。「宮が打たれたら、仕方ない」。その言葉に救われた。
3学年先輩が“ものさし”
国学院栃木高時代は右腕・水沢龍太朗、左腕・渡邉匠と「3本の矢」を形成。チームを18年ぶりのセンバツ出場に導き、3回戦に進出した。宮は抑えとして・・・
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