熱さともろさが同居するプロ2年目。アメリカ人の父から譲りの187センチ90キロの恵まれた体躯、緊張とは無縁の強いハートで将来に大きな期待を抱かせている。2勝で終え、「ふがいない」と語る1年目の雪辱に燃える今季。右腕の一本立ちが、広島24年ぶりのリーグ優勝のカギを握る。 文=菊池仁志 写真=BBM 理想の投球の実現へ ブレないフォームの確立
一球一球をかみ締めるように、丹念に、丹念に投げ込んだ。昨秋、宮崎・日南キャンプのブルペンにはいつも、その姿があった。
1年目のシーズンを終えた
九里亜蓮。20試合に登板し、2勝5敗、防御率4.00。その成績を「ふがいなかった」と振り返る。1年目の反省を2年目につなげる大事な時期。休日を除く、実働18日間で球数は2000球を超えた。
2年目を迎えるにあたり、このオフのテーマは「フォームの確立」。思い描くピッチングをするため、「コントロールが定まらないことがたくさんあったので、それをなくしたい」と語る。求めるのは安定性の向上で、そのためにはいかに脱力した状態で投球のメカニックを完了することができるかがカギ。その感覚を体に覚え込ませることを目的に、チーム一の投げ込みを行った。
「僕は真っすぐがメチャクチャ速いわけじゃありません。だから力で押すようなピッチングではなく、いかに自分の思ったところに投げて相手を翻ろうしていくかを突き詰めていきたい。究極は27球で27アウトを取るピッチングです」
昨季は何度も悔しい思いを味わった。プロの怖さを思い知らされたのは、まだシーズンも始まっていない3月22日の
ソフトバンクとのオープン戦(ヤフオクドーム)。それまでのオープン戦をじめとした実戦登板で結果を残してつかんだ、29日の開幕第2戦(対
中日、ナゴヤドーム)の先発に向けた調整登板だったが、4回を9安打4四球8失点と乱れた。
「実力がないだけ。全部ボールが甘かった」。中でも
李大浩には左越え2ランを含む3打席連続適時打を浴び、わずかな制球ミスさえも許されないことを痛感した。
それでも予定どおり与えられた初先発の機会で、6回5安打1四球1失点の好投で14年のルーキー一番乗りとなる白星をゲット。打者22人に三振ゼロの「持ち味は出せた」という打たせて取る投球だった。そしてその勝利は、広島では62年ぶりの開幕カード新人先発初勝利でもあった。チーム事情から中継ぎ登板を挟んだ2度目の先発、4月19日の
DeNA戦(横浜)でも6回1失点で勝利し、開幕から先発2連勝。しかし、そこから勝利の女神に見放され、一つも白星を加えることなくシーズンを終えた。
14年の開幕2戦目となる3月29日の中日戦(ナゴヤドーム)に初登板、初先発すると、6回1失点で勝利投手に。14年のルーキーで一番乗りの白星を挙げたが……
16度の先発機会で6回以上、自責点3以内のクオリティースタートでまとめたのは7試合。いずれも7回1失点だった5月13日の
阪神戦(米子)、21日のソフトバンク戦(ヤフオクドーム)でも勝敗はつかなかった・・・
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