週刊ベースボールONLINE

 



代役から主役へ一軍滞在が約1カ月。9試合登板に終わった1年目から大きくジャンプアップ──どころか、球史に残る守護神の代役を堂々と務めている。「新・9回の顔」になりつつある、伸び盛りの右腕に飛躍の理由を聞く。
取材・構成=吉見淳司 写真=平山耕一、BBM

自身よりもチームの勝利


──今季の自身の成績をどのように評価していますか。

福谷 ちょっと出来過ぎかなと思います。昨年の秋からケガだけはしないと口を酸っぱくして言っていたので、離脱しなければ満足だと思っていましたから。

──ケガをしないどころか、両リーグ最多登板をマークしています。

福谷 監督やコーチが使ってくださるからであって、元気でも登板がなければ投げられないですから。そういうことで周りの方への感謝の気持ちでいっぱいです。去年、一軍では9試合に登板して防御率は7点台。今年はずっと二軍でも仕方ないから、ケガをせずにやろうというスタンスでやってきたので。

──シーズン終盤にはクローザーを担いました。三振奪取率も高く、適性を感じているのでは。

福谷 大学のときからそういった場面で使ってもらっていたので、大きい経験をさせてもらったと思っています。気持ちの持っていき方や、失敗した後、負けたときの気持ちの切り替えは大学のときに一番学ばせてもらいました。

プロ初セーブは8月6日の広島戦(ナゴヤドーム)、3対2の9回一死から後続を抑えた(写真=松村真行)



──初セーブは8月6日の広島戦(ナゴヤドーム)。3対2の9回裏一死から、緊急降板した岩瀬仁紀投手に代わってマウンドに立ちました。

福谷 緊張とか、自分の結果というよりも、「ここで同点に追いつかれたらグダグダ行っちゃうだろうから何としても抑えたい」という気持ちでいっぱいで、セーブは試合が終わった後に言われて気が付きました。

──肩は作っていたのでしょうか。

福谷 先頭打者が出た時点で、何があってもいいようにという意味では作っていました。まさか、ああいう形で回って来るとは思っていなかったですけど、負けられない試合が続いていたので準備だけは怠らないようにしようと思っていました。

──その後は岩瀬投手と入れ替わりでクローザーとなり、9月上旬まで無失点を続けます。

福谷 抑えだからというわけではなく、とにかく先発の人の勝ちを消したくないという思いが強くて。だからリードしている場面で8、9回を投げるときには気合が違いますね。

──しかし9月9日の広島戦(マツダ広島)では1対1の9回から登板し、イニングまたぎの10回にサヨナラ負けを喫しました。

福谷 同点の場面での登板って、僕の中ではすごく難しいんです。延長12回まで考えなければいけないので、目の前の打者を打ち取って終わりではなく、自分が1回でも長く投げなくちゃいけないとか、流れをうまく持ってこないといけないとか、変に考え過ぎてしまうところがあって。

──同点の場面では1イニング以上を投げるつもり。

福谷 残っている中継ぎ投手の人数を確認して、例えば3人しかいないのに、まだ9回だったら、1人は絶対にまたがなくてはいけない。そういう余計なことを考えているから打たれてしまうのかもしれないですけれど、それでもしっかりやっていきたいですね。

──その2日後の同カードでは2対1の9回に登板し、今度は三者凡退に抑えました。サヨナラ負けが頭をよぎったりはしませんでしたか。

福谷 全然なかったですね。1日空いていましたし、気持ちの切り替えはできる方だと思うので。チームに申し訳ないという気持ちはありますが、ユニフォームを脱ぐときには切り替えが終わっています。

──あの場面、カープファンはかなり盛り上がっていました。

福谷 特に広島戦や阪神戦は、相手チームが球場全体で盛り上がる。ナゴヤドームにはなかなかない雰囲気ですけど、それにのまれてはいけないと思っていますし、逆に楽しめたらな、とは思っています。例えばあのときは2人目の打者が堂林(翔太)で、やっぱり声援がほかの選手とはちょっと違う。「うわっ、人気あるんだな」と感じながら投げられましたし、冷静でいられました。

8月13日のDeNA戦(ナゴヤドーム)では8勝目を挙げた又吉克樹(右)とともにお立ち台に。竜が誇る強力リリーフコンビだ(写真=松村真行)



──9月21日の阪神戦(甲子園)では初勝利を挙げました。

福谷 (勝ち星が)ないよりは……というくらいで、全然気にしていなかったんですけど、自分よりもチームが勝てたのが本当に大きかった。お互い点が取れそうで取れず、僕たちも毎回のようにサヨナラのピンチがありました。そういった意味で、あの試合で勝てたのは自分にとっても、中継ぎ陣にとっても大きい試合だったと思います。

──9、10回をゼロに抑え、11回に味方が1点を勝ち越しました。白星の権利があることは意識していましたか。

福谷 いえ、ベンチでデニーさん(友利結投手コーチ)に言われたんです。でも僕は勝ち運がないことをみんな知っているので、森さん(繁和ヘッドコーチ)が冗談で、「どうせ点を取られるから気にするな」って言われたり(苦笑)。ただ、勝ちに関しては、どの選手も「チームが勝てば」という気持ちはあると思います。リリーフが踏ん張って勝てたというのがチームにとって大きかった。

9月21日の阪神戦(甲子園)で同点の9、10回を無失点で切り抜け、念願のプロ初白星を挙げた(写真=前島進)



アドバイスを生かす


──今季、ターニングポイントとなった試合はありますか。

福谷 4敗しているんですけど、それ以上に自分の中では負けている印象なんです。うまくいったときよりも悪かったときの方が心に残っています。それに、森さんやデニーさんにアドバイスをいただいたときがターニングポイントだと思っています。だからこれまでにも何回もあったんですよ。最初に言われたことと、いま言われていることも違うので。

──一例を挙げていただくとすると。

福谷 一軍に上がったばかりのころは、「高低はどうでもいいから、ベースの上に思い切って投げろ」、それだけだったんです。でも、しばらく投げて、バレンティンにホームランを打たれた試合(4月10日対ヤクルト、ナゴヤドーム)の後に、「もうベース板の上に投げられるようになったから、そろそろ高低までいってみようか」と言ってもらいました。いきなり高いところからではなく、まずはできるところからちょっとずつ、ちょっとずつ、道を示してくださるので、うまく乗ってこれたし、「それは無理だ」と思うこともありませんでした。本当にありがたいですね。

──大先輩である岩瀬投手からアドバイスをもらうことはありますか。

福谷 タイプが違うので技術的な話をすることはあまりないですが、肩作りの大切さなどで、「1球多く投げて肩を作ると、1年144試合だと、144球多く投げることになる」という話などをしてもらっています。ほかには「今を見るのも大事だけど、そればかりではこの世界では無理だよ。先を見ないと」なども言ってもらいました。

──球史に残るクローザーとともに過ごせるのはとてもいい経験ですね。

福谷 それはもちろん。山本さん(昌)や川上さん(憲伸)など、ほかの投手も同じです。今の中日はベテランの方が多いというイメージがあるかもしれませんが、それを僕たちは利にしないと。少しでも吸収できることがあったら学んでいきたいですね。

──若手の台頭も期待される中で、来季に誰がクローザーを務めるのかも注目点となっています。

福谷 まあ、ドラゴンズの守護神はずっと岩瀬さんなので。自分が自分が、というよりは、8回でなくとも、6回でも7回でも、少しでも岩瀬さんにつなげるようにしたいという気持ちが強いです。

──来年の評価は、今年の成績が基準になってくると思います。

福谷 今年と同じことをやっていたら、同じ成績を残すのは無理ですよね。自分でレベルアップするか、何かうまくはまらないと、今年より上の成績はましてや無理。来年は我慢の年だと思っているので、ケガをしない体をつくって、しっかり練習をこなしていきたいです。チームはCSに行けず、ファンの方は怒りや悔しさを感じていらっしゃると思うんですけど、選手も同じくらい悔しくて、何とかしなきゃと思っています。秋、来年の春に人一倍しっかりやって、自分にできることをまずはやっていきたいですね。
PROFILE
ふくたに・こうじ●1991年1月9日生まれ。愛知県出身。183cm90kg。右投右打。横須賀高から慶大に進学し、2013年ドラフト1位で中日に入団。ルーキーイヤーは6月に一軍昇格するも、9試合登板で約1カ月後に再び二軍に。今季は開幕から一軍で救援としてフル回転。8月からは岩瀬仁紀に代わりクローザーを務めている。14年の一軍成績は72試合、2勝4敗11S32H、防御率1.81。
プロスペクトインタビュー

プロスペクトインタビュー

各球団の将来を担う若手有望株へのインタビュー。現在の不安や将来への希望が語られます。

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング