
オレが優勝候補に推している阪神は、開幕ダッシュに失敗したが、これは首脳陣の見極めの悪さが原因よ。でも態勢が整ってきたから、後半戦の戦い方が楽しみや/写真=BBM
阪神はようやく態勢が整った。ここからよ
特別な夏……である。いつもなら甲子園のアルプススタンドはファンや各校の応援団で埋まっている。それがない。寂しいけど仕方ない。あらためて、コロナ禍が憎い。それでも球児の躍動は、見る者を熱くする。これが高校野球……。ホンマ、いいものである。
たった1試合だけの甲子園。交流戦が甲子園で行われている。一方で各地域では地方大会が開催された。オレの母校、北陽高(現関大北陽高)は勝ち進み、準決勝では大差を付けての圧勝。残念ながら、大会はここで終了となった。決勝戦を見てみたい気もするが、何より後輩たちの奮闘に拍手を送りたい。母校がここまで勝ち進んだのはいつ以来だろうか。本来なら、スタンドでOBたちが熱狂しているところ。高校野球は世代を超える。それができなくても、こんな夏、こんな苦しいときに、よく頑張った後輩たちを誇りに思う。
さてプロ野球だ。6月19日開幕という変則日程の中、2カ月が過ぎた。早いものだ。アッという間に、シーズンの3分の1以上を消化した。そこで編集担当のS君から今週号の指令が来た。「セ・リーグの2カ月診断をよろしくお願いします」とのこと。そこで思うのは、オレが戦前に予想したとおりの展開になってきたということよ。
Aクラス予想に阪神、
巨人、
DeNAの3チームを挙げた。その中でも優勝の本命にしたのが阪神である。そんな気がなくても、オレは阪神には辛口というイメージがあるようだ。確かに愛着があるチームだからこそ、ついつい厳しい見方になってしまう。そんなオレが優勝候補の筆頭に挙げたんよ。それだけ今シーズンは戦力が整っていると評価したわけなんやね。
「エッ!? まさか岡田さんが阪神を1位予想するなんて」と球界関係者を驚かせたようだが、オレは正当に評価しているよ。戦力的にバランスがよく、層の厚みはリーグトップ。だから普通に戦えば優勝できるという見立てやった。ところが普通に戦えていなかった。あえて厳しい言い方をすれば、ここまでは、選手の見極めができていなかった、ということになる。
例えばクリーンアップよ。現在、構想どおりの打順にいる者はいない。当初、マルテ─
ボーア─福留(
福留孝介)といった形を描いていたが、今になって、ようやく
サンズ─大山(
大山悠輔)─ボーアでクリーンアップが落ち着いた。サンズは、開幕時は二軍で、大山は控え。それがマルテの故障、ボーアの不振によって、ここに至っているのだが、大山の四番だって、災い転じて……の偶発的なもの。クリーンアップが開幕時とまるっきり違っているのは、阪神だけやないかな。これはベンチの見極めのなさ、とオレは考えるわけよね。
投手にしてもそうよ。重要なクローザーというポジション、
藤川球児に託したわけやけど、やはり球児に全盛期をダブらせるのは酷。心情的には、クローザーとして復活してほしいと願ってはいたが、現実問題として2月の時点から衰えは見られた、というのがオレの見極めやった。その時点で、クローザーに最もふさわしいのが
スアレス。そう感じていたけど、ベンチは球児を起用し、それがハマらず、ようやくスアレスという形で決着した。
この辺りの見極めさえ的確なら、借金生活に苦しむことはなかった。それが率直な感想だし、逆に言えば、やっと形が整ったのだから、今後、十分に巻き返せるはず。あらためて阪神には、戦力の厚みを武器にした戦いを望みたいのだ。
DeNAは後半戦の伸びシロNO.1チーム
巨人は開幕から実に安定した戦いを続けている。一時は早くも独走気配とさえ言われてたが、ここにきて、低空飛行になってきた。坂本(
坂本勇人)、丸(
丸佳浩)が本調子ではない。それでも貯金を保っている。これはすべて原(
原辰徳)監督の用兵、やりくりのうまさに起因している。思い切って実績のない若手を起用し、それがズバリ的中する。北村(
北村拓己)とか増田(
増田大輝)とか、正直、オレはどういう選手か深く知らなかった。それが起用されればポイントになる働きをする。こういうことが見極めの重要なところなんよね。ベンチワークが巨人の強み。ここに尽きると思うんよ。
優勝争いができるチームとして注目していたDeNAだが、ここは今後の伸びシロNO.1とオレは見ている。ここまでの戦い、さらに今後に目を移した場合、最も余裕のある戦いを続けているのがDeNAである。とにかくここは打力のチーム。ところが先の阪神戦では外国人なしの先発メンバーできたのよ。
ソト、ロペス、
オースティンはそら脅威よ。現在、オースティンは故障で離脱、ソトも病気で一時離脱(8月14日復帰)は仕方ないけど、ロペスは調子が下降気味でもスタメンを外すとは考えられなかった。
ラミレス監督は長丁場になることを見据えて、外国人に休養を与えていると言っていいやろな。目先より、長いシーズンを考えた用兵。これこそが余裕の源ではないだろうか。早くもいっぱいいっぱいで戦うチームとは対照的に、DeNAには余裕がある。これが伸びシロよね。
ここまでがんばってきた
ヤクルトだったが、やはり投手陣の弱さが浮かび上がり、これからは増々、苦しくなるやろな。
広島、
中日も激変する材料は少ない。となれば巨人、DeNA、阪神の戦いに絞られてくる。AクラスとBクラスが、クッキリと分かれる様相やし、その中でオレの本命・阪神が、どう立て直していくのか。暑い夏、オレはタイガースの戦いに注目しているのである。(デイリースポーツ評論家)
PROFILE 岡田彰布/おかだ・あきのぶ●1957年11月25日生まれ。大阪府出身。北陽高では1年夏の甲子園に出場し、早大では東京六大学リーグ歴代1位の打率(.379)と打点(81)をマーク。80年ドラフト1位で阪神に入団。1年目からレギュラーとして新人王を獲得。21年ぶりのリーグ優勝、日本一を達成した85年は五番打者としてベストナイン、ゴールデングラブ賞。94年に
オリックスへ移籍し、95年限りで現役引退。通算1639試合、打率.277、247本塁打、836打点。オリックスで2年間指導の後、98年に阪神復帰。二軍監督などを経て、04年から08年まで監督を務め、05年はリーグ優勝に導いた。09年から12年はオリックスの監督として指揮を執り、13年からは野球解説者として精力的に活動している。