日本シリーズを左右する逆シリーズ男の存在
日本シリーズでもっともMVPを獲得しているのは
長嶋茂雄(
巨人)で4度(63、65、69~70年)。その他、2度獲得しているのは、
別所毅彦(巨人=52、55年)、
堀内恒夫(巨人=72~73年)、
工藤公康(
西武=86~87年)、
秋山幸二(西武=91年、ダイエー=99年)、
古田敦也(
ヤクルト=97、01年)、
今江敏晃(
ロッテ=05、10年)の6人。今江は出場したのは2度だが、2度ともMVPに輝いている「シリーズ男」だ。
逆に不振に陥る選手もいるが「逆シリーズ男」というありがたくない呼び方をされてしまう。投手陣が「逆シリーズ男」を作り、打線を分断させることができれば、日本一にグッと近づくとも言える。00年以降、昨年までの15年間での「逆シリーズ男」をちょっと振り返ってみる。
2000年 巨人4-2ダイエー 20世紀最後の日本シリーズで、巨人の長嶋茂雄監督、ダイエーの
王貞治監督との「ON対決」で話題になった年。第1戦、ダイエーは1対3の7回表、五番の
松中信彦が起死回生の同点2ランを放った。松中はこの年、初の3割をマークし本塁打も33本放っていた。しかし、第2戦からまったく打てなくなった。第4、6戦では四番も務めたが、19打数1安打、打率.053。チームも2連勝の後、4連敗を喫している。
2001年 ヤクルト4-1近鉄 「いてまえ打線」と呼ばれる強力打線で、12年ぶりに日本シリーズに進出した近鉄。三番・ローズ、四番・
中村紀洋、五番・
礒部公一のクリーンアップだったが、礒部が不振に陥り16打数0安打と1本もヒットを打てなかった。礒部は3試合目まで五番だったが、第4戦は七番。第5戦はスタメンから外れた。第4戦は
北川博敏、第5戦は
川口憲史が五番に座ったが、いずれもノーヒット。5試合通じて五番打者はヒットを打てなかった。
2002年 巨人4-0西武 前年に近鉄の五番打者に続いて、この年も西武の五番・
和田一浩が大不振。シーズン中は初の規定打席到達で3割をマーク。33本塁打を放っていたが、巨人投手陣に抑えられ、15打数ノーヒットに終わった。前年の近鉄からパ・リーグの五番打者は34打数連続ノーヒットという珍記録となった。
2005年 ロッテ4-0阪神 ロッテが阪神を圧倒して4連勝を飾った年。阪神の四番・
金本知憲は03年の日本シリーズでは3打数連続本塁打を放つ活躍をしたが、この年はロッテ投手陣に抑えられ第3戦までノーヒット。第4戦でやっとヒットが出たが焼け石に水。結局13打数1安打、打率.077に終わっている。
2007年 中日4-1日本ハム 前年と同じカードで、リーグ2位から進出した中日が4勝1敗でリベンジした。前年、日本シリーズMVPを獲得した日本ハムの三番・
稲葉篤紀が大ブレーキとなる。第3戦までノーヒットで第4戦に1安打放っただけの、17打数1安打、打率.059。稲葉は7度日本シリーズに出場し、06年のMVP、97、12年にも優秀選手に選ばれた「シリーズ男」だが、この年だけは「逆」だった。
2013年 楽天4-3巨人 巨人の
阿部慎之助は第3戦まで三番、第4戦からは四番に座ったが、23打数2安打、1打点、打率.087と楽天の
田中将大、
則本昂大、
美馬学らに抑えられた。
今年も第4戦までヤクルトの五番・
雄平が16打数1安打、打率.063と不振。9、10月とクライマックスシリーズでは3割をマークしていただけに、第5戦以降のバッティングが注目される。
文=永山智浩 写真=BBM