
一塁上で、自分の役割をベンチ以上に考えている近本。こういう一番打者がいると厄介ですし、阪神の選手個々が考えてプレーしているということが分かる話です。そういうチームは強いですよ[写真=BBM]
少し前の話で申し訳ないのですが、序盤戦の首位攻防戦は見応えがありましたね(5月14〜16日)。東京ドームでの
巨人対阪神です。阪神が2勝1敗で勝ち越し、首位をキープしました。今年の阪神は違うなと思います。というか本物の強さを身に付けたぞ、と感じています。
先週の週べの阪神特集で近本(
近本光司)の
インタビューが載っていましたが、走塁のところなど、大変興味深い話でした。キャッチャー目線からの話をしますと、たくさんフェイクを入れられたときは、半速球でもせいぜいカットボールかツーシームしか投げられません。そしてカーブは打者に対して「投げられますよ」という意味で、初球にしか使えない。フォークは中途半端だと打たれますし、ワンバウンドして前に落としたら、近本の足なら簡単に二塁に走られますので難しい選択になる。
近本は、あとの打者のことも考え、さらにチームの作戦まで自分で考えている。こんな一番打者は厄介ですよ。そして何より、このような内容を世間に出すことで、相手チームも読むことを想定していますよね。これを読んだ相手捕手は、さらに迷いますよ。だってある程度手の内を見せていますし、盗塁を失敗してもいい、という感じまで言っているわけですから、ほかに考えがあるかも、となる。
こういう考え方ができるというのは、矢野(
矢野燿大)監督をはじめ、首脳陣がそこまで制約を与えていないからだと思います。矢野監督は本当に優しい。余計なストレスを選手に与えていない。アウトになっても責めない。それだと選手たちは思い切りできると同時に、自覚が生まれてきたのではないかと思うのです。
そうじゃないと、5月11日、13日の
中日戦で、代走に出てきた熊谷(
熊谷敬宥)が2度とも初球で盗塁を決めることはできないです。選手というものは普通は、ピッチアウトしてくる可能性など、失敗を考えてしまうものです。人間はどうしてもネガティブな出来事を覚えていたりするので、緊張するのです。それを超越した中で、1球目から走れ、しかもセーフになる。すごいことを阪神はやっています。そういう面々と、新人の
佐藤輝明の豪快なバッティングと顔つき(笑)を見ていると、今年の阪神は野武士軍団のような感じがします。
3連戦の印象でいうと、やはり巨人は原(
原辰徳)監督の用いる作戦で勝機を見い出そうとしている感じがしましたが、阪神は、野武士たちが、自分たちの持っている技術を出し切りながら「やってやるぞ!!」という気迫的なものを感じていました。これだとまずそう簡単に順位を落とすことはないと思います。
そして阪神が強いという理由のもう一つは、私の耳に「夜の街に出ている」という話が一切入ってこないということです。仲間内では「アイツら本気だ」という話になっています。今年の阪神はマジで強いですよ。
PROFILE 大久保博元/おおくぼ・ひろもと●1967年2月1日生まれ。茨城県出身。水戸商高から85年ドラフト1位で
西武に入団。トレードで巨人入りした92年に15本塁打。95年現役引退。野球解説者やタレントを経て、2008年に西武コーチに就任し日本一に貢献。12年からは
楽天打撃コーチ、二軍監督を経て15年に一軍監督に就任した。15年限りで辞任し、16年から野球解説者をこなしながら新橋に居酒屋「肉蔵でーぶ」を経営している。
デーブ大久保チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCKa1VlSq1WwdSQWv4JFdgxg デーブ大久保ツイッター
https://twitter.com/daveohkubo