
日本記録達成ゲームの後、記者たちに囲まれる阪神・江夏
右腕と左腕の違いがあるが、そのときギアが確かに上がった……。
6月8日、
楽天─
DeNA戦(Koboパーク宮城)で楽天の先発マウンドに立ったのが、すでに単独の日本最多記録7試合連続2ケタ奪三振の記録を打ち立てた右腕・
則本昂大だ。本拠地の大歓声を浴びながら目指すは、8試合連続の世界タイ記録。8回、すでに9個の三振を奪っていた則本が一死二塁で迎えたのが、日本の四番・
筒香嘉智だった。この日の4打席目だったが、それまですべてヒットを許していた。
「何としても(三振を)取りたかった」という則本がカウント1ボール2ストライクから投げ込んだのは、内角への149キロ直球。これで大記録を達成し、9回にも2三振を奪い、2失点完投12Kで8勝目を挙げた。
ライバルから狙って決めた三振記録──オールドファンなら阪神の左腕・
江夏豊の日本記録達成試合を思い出すだろう。1968年9月17日の阪神─
巨人戦(甲子園)だ。この試合、4回に
王貞治から三振を奪い、当時の日本記録シーズン353奪三振に並んだ。江夏は王をライバルと定め、新記録も王からと宣言していたが、このときは新記録とタイ記録を勘違いしていたという。
「本当に困った」という江夏だが、ここからがすごかった。江夏は王から新記録を奪うため、ほかの8人からは三振を取らずに打ち取るという魔法のようなピッチングを見せ、7回一死、再び打席に入った王を見事、空振り三振に打ち取った。
試合も劇的な展開となり、0対0で迎えた延長12回、江夏が自らのバットでサヨナラ打を放ち、勝利を決めた。なお、江夏は閉幕までに世界記録をはるかに上回る401奪三振まで記録を伸ばしている。果たして、次の登板で、則本は世界の〝オンリーワン〟になれるのだろうか。
写真=BBM