
「感触はよかった」と松井。会心の一発だった
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は4月10日だ。
開幕一軍を期待されながら、オープン戦途中、腹膜炎で離脱した
日本ハムの
清宮幸太郎が、4月10日メットライフでのイースタン・リーグ
西武戦で、いよいよ実戦復帰する。
偶然か、はたまた
栗山英樹監督の思惑があってかは分からないが、「4.10」は、高卒の大物新人にとっては、なかなか縁起のいい日ではある。
さかのぼること25年。1993年4月10日に、高知県春野球場でイースタン・リーグの開幕戦の
巨人-
ヤクルト戦が行われた。
この日、巨人の一番に入ったのが、星稜高からドラフト1位で入団したゴジラこと
松井秀喜だ。鳴り物入りでの入団もプロの壁にぶち当たり、オープン戦、教育リーグとまったく打てず、体力的にも精神的にも疲労困憊。一時は「もうバットを振るのも嫌になりました」と漏らしたこともある。
だが、「開幕一軍切符」がはく奪され、二軍スタートとなったことで闘争本能が点火されたのか、表情がガラリと変わった。
7回二死一塁で迎えた第4打席だった。マウンドには同じドラ1の
伊藤智仁。バルセロナ五輪銅メダル右腕だったが、「ちょっと松井君を意識し過ぎました」と得意のスライダーがすっぽ抜けると、松井のバットが一閃。打球は右翼席後方に立つ楠の木にぶち当たった。130メートルの場外弾だ。
打球の行方を見守りながら何度も小さくガッツポーズした松井は、試合後、「内心ではうれしいんだから、静かにしておいて」と報道陣におどけて言いつつ、「やっぱりうれしいですよ。いままですごく打てなかったですからね。後から(二軍にやったことを)後悔させるように、早く上に上がって頑張りたい」と、ギラギラした胸の内を明かした。
一軍の開幕戦を控えた東京ドームで松井のホームランを知った
長嶋茂雄監督は「そりゃ大したものです。早くビデオで見たいですね」と満面の笑顔を浮かべていた。
写真=BBM