今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 稲尾和久がアンダースローに?
今回は『1962年9月10日号』。定価は40円だ。
巨人・
王貞治が一本足打法で打ちまくっている。週べの記者も宿宿舎の王に直撃取材をしている。
王はキャンプで、この打法を試したときは、すぐ断念したが、シーズン中、
荒川博コーチに言われ、再チャレンジした際は、驚くべきことに1日でマスターしたという。
「やってみたら一日でできた。これは大きな驚きでした。それですっかり自信のようなものができました」
そこから一気にホームランダービーのトップを突き進むが、大きく変わったのはタイミングだ。
「ぼくは投手の足に合わせているんです。投手も全力で投球するために、軸足に全体重をかけて投げ込んでくる。その場合、腕よりも振り上げる足のほうが、より投手の正しい投球のタイミングをつかめると判断しました。だから僕は投手が足を上げるに合わせて自分の右足を上げます」
それが分かってタイミングを狂わせる投手もいた。モーションを止めたり、わざと素早く、あるいは逆にゆっくりとしたりだ。
だが、王は「そういう投球は必ずといっていいほどボールになるし、ストライクになっても威力のある球ではない。打って打てないことはない」と意に介さない。
さらに「要するにバッティングというのは、投手とのタイミングの狂わせ合いですからね。それが打者に合ったときにはヒットになる。投手のものだったときは、凡打に打ち取られてしまう。それだけです。だから足を上げるかどうかは、型に現れたものに過ぎないわけで、本質はすべて同じだと思います。ぼくは足を上げないで、いまと同じタイミングがつかめたらもっと打てると思っています」とも話していた。
西鉄の
稲尾和久が8月25日の大毎戦で通算200勝を飾った。プロ7年目半ばの記録だからすさまじい。1年に30勝ペースだ。
実は7月までは、わずか9勝と不振続き。それが8月に10連勝で一気に記録達成となった。
それまでの不振の原因はヒジ痛だ。
「一時はアンダースローにしようかと思いました。ただ、ファンの方にアンダースローでごまかしている稲尾をお見せしては申し訳ないと思って」
結局、現在も医薬品として使われているタブソールを塗ったら、まったく痛みを感じなり、現在の快進撃につながったという。
タブソール、恐るべし、か。
以下宣伝。
週べ60年記念シリーズ『巨人編』『
日本ハム編』『阪神編』『
ロッテ編』が発売中。現在、『
広島編』を鋭意制作中です。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM