抜群のチェンジアップ

高校日本代表の左腕・板川(横浜)は、日に日に信頼感が増しており、チームの「救世主」としても期待されている
左を制する者は、アジアを制す――。
第12回BFA U18アジア野球選手権大会(宮崎)で日本は9月5日、韓国と対戦して1対3で惜敗した。7日からはスー
パーラウンド(対チャイニーズ・タイペイ、中国)だが、決勝進出を狙う上では事実上、一つの黒星も許されない状況となっている。
そこで、高校日本代表のキーマンとなるのは横浜のサウスポー・
板川佳矢である。通用すると、明らかとなったのは、韓国との一次ラウンドだ。7回から1イニングを三者凡退、わずか13球で相手打線を手玉に取った。何より、今後の活躍を確信させたのは、チェンジアップで奪った2つの空振り三振。タイミングを完全に外しており、相手打線に嫌なイメージを植え付けたはずだ。
2016年のU-18アジア選手権(台湾)では
広島新庄・
堀瑞輝(現
日本ハム)、17年のU-18W杯(カナダ)では秀岳館・
田浦文丸(現
ソフトバンク)がフル回転。高校日本代表に欠かせない左のリリーバーとして獅子奮迅の活躍を見せた。堀はスライダー、田浦はチェンジアップという武器があり、板川はチェンジアップが一芸に秀でている。板川も歴代先輩からの系譜を継ぐ左腕で、この2人に匹敵するだけのウイニングショットがあり、今後の活躍を予感させる。
高校日本代表を率いる永田裕治監督は8月25日のチーム結成以来、野球日誌を義務づけている。消灯前に提出し、指揮官が夜に目を通して、朝に選手たちへ戻す。必ず、一言が添えられており、言葉では通じない、男同士のコミュニケーションツールとなっている。
「チームを救うピッチャーになってほしい」
板川は永田監督からの直筆メッセージを見て当然、意気に感じている。
「勝敗を分ける場面で使う、と言われています。大事な役割になりますが、期待されることほど、選手としてうれしいことはありません。(韓国戦も)楽しむことができました」
7、8日はスーパーラウンド、9日は決勝・3位決定戦と3連戦になるが、板川は球数制限の中でも3連投を辞さない構えでいる。
「選んでいただいた監督に、結果で恩返ししたいです。堀さん、田浦さんの先輩方のような投球を見せられたらいいと思います」
リリーバー・板川は小気味の良いマウンドさばきで、相手に流れを渡さない。日本にとって初の大会連覇へ向けて、浮沈を占う「救世主」となるはずだ。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎