背番号は、ある選手が引退しても、またある選手に受け継がれていく。2019年も新たな後継者が誕生した。その歴史を週刊ベースボールONLINEで振り返っていく。 “生涯一捕手”の象徴
草創期から「19」は悲劇の色が濃かった。
阪神の2代目は
西村幸生。主戦投手ではなく、“酒仙投手”と呼ばれた豪傑だ。
巨人、特に同郷の
沢村栄治に負けん気を燃やして37年の年度優勝決定戦で巨人を破る原動力となったが、わずか3年で退団し、のちに応召、戦死する。南海の2代目は
神田武夫。結核と闘い、時にはマウンドで吐血しながらも、応召で選手が次々と離脱していくチームで41年からの2年間、113試合、716回1/3を投げまくる。そして43年、病死した。のちに神田の「19」を継承したのが野村克也だった。
野村は監督も兼ねていた南海を追われ、“生涯一捕手”を掲げて
ロッテ、
西武と渡り歩き、25年にわたって「19」を背負い続けた。多彩な好投手が並ぶ系譜で、“月見草”は異彩を放っている。のちに野村は
楽天の監督となり、およそ四半世紀ぶりに「19」を着けたため、通算では29年も「19」だったことになる。
【12球団主な歴代背番号「19」】
巨人
水原茂、
小林繁、
上原浩治、
菅野智之、上原浩治☆(2019年~)
阪神 西村幸生、
藤井栄治、小林繁、
中西清起、
藤浪晋太郎☆
中日 松尾幸造、
大矢根博臣、中山義朗(俊丈)、
中山裕章、
吉見一起☆
オリックス 丸尾千年次、
天保義夫、
秋本祐作、
高木晃次、
金子千尋 ソフトバンク 野村克也、
山内孝徳、
永井智浩、
森福允彦、ミランダ(2018年シーズン途中~)
日本ハム 野口正明、
米川泰夫、
尾崎行雄、
間柴茂有、金子弌大☆(2019年~)
ロッテ
土井垣武、
小野正一、野村克也、
井辺康二、
唐川侑己☆
DeNA 林直明、
江尻亮、中山裕章、
小桧山雅仁、
山崎康晃☆
西武 野口正明、
山本秀一、野村克也、
森慎二、
齊藤大将☆
広島 広岡富夫、
大石弥太郎、
新美敏、
長谷川昌幸、
野村祐輔☆
ヤクルト 松田清、
浅野啓司、
梶間健一、
山部太、
石川雅規☆
楽天
川尻哲郎、野村克也(監督)、
藤平尚真☆
(☆は2019年)
波乱万丈の投手たち

巨人・上原浩治
野村より前には、戦前から2リーグ分立期にかけて活躍した頭脳派の“闘将”土井垣武が阪神と毎日で「19」の捕手だったが、野村の「19」を継承するような捕手は不在。系譜を見ても圧倒的に多いのは投手で、野村と同時期に活躍したのが東映の“怪童”尾崎行雄だ。
近年は「18」からエースナンバーの座を奪う勢いを見せているが、その歴史を振り返ると、「18」に勝るとも劣らない好投手が並ぶ。ただ、「18」に漂う“エリート”らしさは希薄だ。オリックスを自由契約となり、日本ハムでも「19」を背負う金子弌大のように、順風満帆では終わらないエースが多い。
巨人の系譜をさかのぼってみる。復帰1年目の「11」を挟んで、2019年に「19」へと“返り咲いた”のが“雑草魂”の上原浩治だ。1年目の1999年から「19歳の浪人時代を忘れないために」背負うと、投手3冠、新人王に輝いた。この年、旋風を巻き起こしたのはパ・リーグ新人王となった西武の「18」
松坂大輔だったが、数字では上原に軍配が上がる。上原はメジャーでも一貫して「19」を背負い続けた。
さらにさかのぼると“悲劇のサイドハンド”小林繁がいる。移籍した阪神でも「19」を着けて、2球団で沢村賞に輝いた。投手ではないが、初代は42年MVPの水原茂。シベリア抑留から生還し、監督として黄金時代を築いた名将でもある。
写真=BBM