
今季も中村は攻守走でカモメ軍団をけん引する
いよいよ各地で春季キャンプがスタートし、
井口資仁体制2年目を迎える
ロッテは今年も石垣島で汗を流す。11日までという異例の短期日程、2月だけで15試合をこなす“超・実戦主義”とトピックは豊富だが、各ポジションでぼっ発するであろう苛烈なレギュラー争いが最大の注目点であることに変わりはない。
その中で唯一と言えるほど“安泰”“無風”と目されるのがセカンドだ。2018年シーズン、ロッテの打の主役として、覚醒した四番・
井上晴哉に並び立つ存在だった
中村奨吾。三番を担いながらリーグ2位の39盗塁をマークし、再コンバートされた二塁ではゴールデン・グラブ賞を獲得。“ミスター・ロッテ”の象徴である背番号「8」が板についてきた。
背番号「8」=“ミスター・ロッテ”。かつては大打者・
山内和弘が背負い、現役から監督までロッテ一筋を貫いた
有藤通世、2005年から15年までは
今江敏晃(現・今江年晶、
楽天)が受け継いでチームの顔となった。特に有藤のイメージは色濃い。ダイナミックな攻守走を兼備したトータルプレーヤーこそが「8」にふさわしく、中村はまさにその正統後継者と言える。
井口監督も「トリプルスリーに最も近い選手」と評価するが、そう考えると、昨季はシーズン中盤まで3割を超えていた打率、盗塁はともかく、わずか8に終わった本塁打には物足りなさを感じる。確かに2018年はそれまでのひたすらに振り切る打撃から、中堅方向への打球が増えたことで打率が上昇したのだが……。
好調なスタートを切りながら、周囲の期待ほどには本塁打が生まれなかった昨季の序盤。中村に「思ったより(本塁打が)少ないと感じているか」と問うと、「それは関係ないですね。ホームランはヒットの延長だし、そういうタイプだと思っているので。狙って打てるわけでもないし、そこはまあ、自然に出てくるものだと思います」と話していた。
それが飛躍の1年を過ごすうちに、ややトーンが変わっていった。シーズン終盤には「クリーンアップなので大きいのも打たないと」と口にし、オフに入ると契約更改の会見の席上で「(長打は)狙って打てるものではない」という変わらぬ言葉のあとに、「確実性を高めながら、力強さを増していきたい」と2019年に目指すべきものを語っていた。
さらなる進化を続けるカモメの新たな背番号「8」。その先に待っているのは盗塁王のタイトル、トリプルスリーの栄光、そして誰もが認める“ミスター・ロッテ”の称号だ。
文=杉浦多夢 写真=BBM