昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 エースのジョーの夫婦愛
今回は『1966年10月31日増大号』。定価は70円だ。
巨人─南海の日本シリーズが開幕した。この号には第4戦までが載っていた。
巨人の開幕投手は誰かが話題になっていたが、来る南海との日本シリーズにかなり自信があるのだろう。巨人の選手も記者たちの「先発当てゲーム」に乗った。
その中で「先発は俺だよ。俺のほかに誰がいるんだい」と言ったのは、
王貞治。「もっとも先発の一塁手だがね」と想定内のオチだった。
候補は
城之内邦雄、
堀内恒夫、
金田正一。シーズンの実績は城之内だが、日本シリーズではまだ勝ち星なしとつきがない。堀内は新人、金田はシーズン中はさんざんだったが、大舞台への強さはある。
長嶋は「ジョー(城之内)だよ、ジョー。俺の勘はさえているんだぜ」。同意見が14人で最
大勢力だった。
冒頭のジョークの後での王は「誰がなんといっても堀内さ。なあ」と言って、傍らの堀内自身に目をやると、
「そうですよ。僕が投げなきゃ収拾がつかんでしょ」
と乗ってきた。
ただ一人、「さあ、分からんな」と答えたのが、捕手の森昌彦。おそらく知っていたのだろう。
実際の開幕第1戦は、城之内が先発し勝利投手に。ネット裏に夫人を招待していただけに喜びもひとしおだった。なお、城之内のピンチの際、夫人がぎゅっと何かを握りしめ、下を向いていた。記者たちは「お守りかな」と思っていたが、尋ねると、
「2人で写っている写真です。一生懸命写真を抱いてお祈りしていたんです」とのこと。
ご馳走様です。
第2戦は堀内で落とし、第3戦は金田正一のはずだったが、雨で順延となったこともあり、城之内がまた投げて勝った。
南海は、この3試合にパームボールを武器とする“一枚看板”
渡辺泰輔がすべて先発。第1戦は打者6人でKOされたが、2戦は勝利投手、3戦目は好投しながらの敗戦投手だった。
対渡辺で張り切ったのが「高校時代(法政二高)、慶応高の渡辺さんとはよくやったからね」という
柴田勲。2、3戦と渡辺から6打数6安打。第4戦では
皆川睦男から打って7打数7安打とした。
「まぐれですよ」と笑う柴田だが、本来の一番から打順を七番に下げられた悔しさもあったようだ(一番は
国松彰。
川上哲治監督は「一番を2つつくりたい」と話していた)。
第4戦は待たされ続けた金田が1失点完投勝利。打っても2安打で、うっぷんを晴らした。
では、また月曜日に。
<次回に続く>
写真=BBM