
通算700本塁打に到達した王
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は1976年7月23日だ。
何とも言いようのない大歓声が川崎球場を包んだ。その中を
王貞治(
巨人)はゆっくりとした足取りでダイヤモンドを1周する。いつもと同じように淡々とした表情で走る王。700回目の記念すべき大アーチを川崎の夜空に架けたといっても「特別に感慨はなかった」と王は言った。
しかし“難産”だった。699本から700本まで、あと1本となってからというもの20日間、7試合、29打席も本塁打が出なかった。その間、周囲は騒がしくなったが、それにやっとピリオドが打たれた。
7月23日大洋戦、午後9時4分に待望の一本が生まれた。8回表無死、初めて一本足打法をファンの前で披露したゆかりの球場で、
鵜沢達雄の初球カーブを右中間席へ叩き込んだ。
長嶋茂雄監督はじめ、全ナインが総出で王を迎え入れた。大洋球団からも花束とホームベースが贈られた。
「ホームランを打つのがこんなに難しいなんて……」と思わず頭をかいた王。さらに「とにかくホッとしたというのが実感です。周囲に騒がれ、雨があり、オールスター。延び延びになっていたので、その間はやはりいい気分ではなかった」と語った。
写真=BBM