昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 激化するスパイ合戦
今回は『1969年10月6日特大号』。定価は80円。
優勝争いを展開する阪急、近鉄のサイン盗み騒動が激化していたが(いずれも否定はしていた)、そのさなか、9月13日の西鉄─近鉄戦で事件が起こった。
近鉄の佐々木投手が、グラブにサインの解読法を書いたカンニングペーパー、のちの乱数表(知ってますか?)の元祖みたいなヤツを張り付けていたのを審判にとがめられたのだ。
野球規則、「投手のグラブは、そのグラブの色と異なった色のものをグラブにつけてはいけない」に引っかかった。
それでも近鉄はあきらめず、15日の南海戦でもやって、再び審判に注意された。
これは
三原脩監督がサイン盗みを恐れ、サインを複雑化したためだった。ただ、相手はいずれも西鉄、南海ではない。優勝を争っていた阪急だ。スパイ団が近鉄が試合をする各球場に来ているという。
「阪急さんはサインを盗んで、解読するのがうまいからね」
と近鉄・三原脩監督。
三原によれば、阪急はスコアボードの隙間からのぞき(これは西宮だけか)、トランシーバーで連絡しているという。
阪急側は逆に「うちはやってない。やっているのは近鉄さん。スコアボードを動かして合図を出している」と主張した。
サイン盗みはパだけではなくセでも噂され、「サインを相手チームに売る選手もいる」と言われた。
このあたりから記事は突然、きな臭くなる。
全国的に野球の賭け屋が増えてきたという話に変わる。そして問題は、彼らが八百長を持ちかけたりしないか……と。
この記事では「八百長するような選手は一人もいない」と断言しながらも、賭け屋が選手に取り入るさまざまな手口を紹介し、さらに、あるチームにトレードで来た選手の例を挙げている。
「キャンプ地で知人を名乗る人が、その選手に10万円を渡そうとしているのを、ほかの選手が見た」というのだ。それを聞いた監督は「なにか仕組まれていそうで気持ち悪くて使えない」と、この年、その選手を使っていない、と。
マスコミは、みんな知っていたのだろう。
阪急を引退した
ロベルト・バルボンの連載手記「チコのニッポン日記」がスタート。その中に、こんな一文があった。
「キューバの人間は後悔なんかしない。いつもあすを夢見て、明るく笑っています」
野球は楽しくやりたいものだ。
では、また月曜日に。
<次回に続く>
写真=BBM