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プロ野球20世紀の男たち

ペドラザ、藤井将雄、吉田修司、篠原貴行&渡辺正和「王ダイエー“勝利の方程式”」/プロ野球20世紀の男たち

 

プロ野球が産声を上げ、当初は“職業野球”と蔑まれながらも、やがて人気スポーツとして不動の地位を獲得した20世紀。躍動した男たちの姿を通して、その軌跡を振り返る。

盤石のセットアッパーで99年に日本一


ダイエー・ペドラザ


 1980年オフに現役を引退し、助監督を経て84年に巨人の監督となった王貞治は、角三男鹿取義隆サンチェの継投策にこだわっていた。だが、87年には監督として初優勝も、日本一には届かず。翌88年は2位に終わると、退任。限りなく解任に近いラストシーンだった。

 ダイエーの監督として95年に復帰したが、選手としては頂点を極めた王に、屈辱は続く。前身の南海が73年に優勝して以来、どん底に沈み続けていたホークスにあって、96年にはファンから移動バスに生卵を投げつけられる事件もあった。98年にはサイン盗み疑惑もあり、翌99年4月には、王に復帰のラブコールを送った社長の根本陸夫が急死。ただ、これでチームが一丸となる。

 西武で黄金時代の主力だった秋山幸二工藤公康ら歴戦の新戦力がチームを引っ張り、打線では若手が成長するなど、戦力も整った時期でもあった。99年の投手陣は、11勝の工藤が最優秀防御率に輝き、7年目の若田部健一が5年ぶりとなる復活の10勝、2年目の永井智浩星野順治が10勝を挙げたが、規定投球回に到達したのは工藤、若田部、永井の3人のみ。そんな盤石とは言い切れないスターター陣を支えたのが、鉄壁のリリーバー陣だった。

 クローザーを任されたのは、メジャーではスターターばかりだった来日1年目のロドニー・ペドラザ。開幕してからの入団で、クローザーは未知の世界だったが、「先発だろうが9回だろうが、どこで投げたって同じ」(ペドラザ)とアジャストした。過去に4度、右肩にメスを入れていたため、首脳陣は連投すれば必ず1日は休ませ、そんな気遣いにペドラザも応えて、最終的には48試合で27セーブをマークしている。

ダイエー・藤井将雄


 そして、抜群の制球力を誇る右の助っ人クローザーへとつなぐセットアッパー陣は、さらに強固だった。同じく右腕では、王監督の就任1年目でもある95年に26歳で入団した藤井将雄。先発として結果を残せない中、97年からリリーバーに。多彩な変化球だけでなく、全身全霊の投球で99年は48試合に登板して、“炎の中継ぎ投手”とも言われる。

 リリーフ陣で最古参かつ最年長なのが左腕の吉田修司だ。ドラフト1位で89年に王監督が去ったばかりの巨人へ入団したが、やはり結果が出ないまま94年シーズン途中にダイエーへ移籍。当初はワンポイントが多かったが、次第に信頼を獲得、長いイニングも任されるように。鋭いスライダーを武器に98年には最優秀中継ぎ投手となり、迎えた99年も58試合に投げまくった。

 藤井を上回る60試合に登板して、先発ゼロながら西武1年目の松坂大輔と最多勝を争ったのが、同じく左腕で2年目の篠原貴行だ。もちろん勝ち星はチーム最多の14勝で、勝率.933で最高勝率のタイトルも獲得。現在のものとは計算が異なるが、リーグ最多の26ホールドをマークした藤井が最優秀中継ぎ投手に。吉田が16ホールド、篠原が14ホールドと、3人が3位までに並んだ。

栄光と深い悲しみの2000年


ダイエー・渡辺正和


 日本シリーズでも中日を破り、ダイエーは初の日本一に。だが、パレードの翌日に藤井が入院。末期の肺ガンだった。翌2000年、その穴を埋めたのが左腕の渡辺正和。打線の主力に故障者が続出し、スターター陣に2ケタ勝利が不在という厳しいシーズンだったが、スライダーやスクリューを操り、打者の内角を突く強気の投球で60試合に登板した。51試合に登板したペドラザが3勝35セーブで初の最優秀救援投手。ダイエーは初のリーグ連覇を達成した。

 だが、巨人との日本シリーズを控えた10月13日、藤井が死去。31歳の若さだった。皮肉にも、32歳の誕生日が告別式。99年オフにFAで巨人へ移籍して、日本シリーズで戦うことになる工藤も駆けつけ、秋山や小久保裕紀らとともに棺を持った。チームの体質を変えるために工藤が若手をガンガン叱ると、「その後で、いつもアイツ(藤井)が僕の真意を説明してくれていた」(工藤)という。

 深い悲しみに沈んだダイエーは、日本一に届かず。藤井の背番号15は永久欠番にはなっていないが、21世紀に入って、まだ誰も背負っていない。

写真=BBM
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