「これがプロなんだな」
俊足と広い守備範囲が持ち味で、プレーを見ていても野生感たっぷりの岸潤一郎。その潜在能力の高さで高校時代は1年春からベンチ入りし、投手兼中軸打者として活躍した。2019年ドラフトでは8位指名を受け、徳島インディゴソックスでのチームメートの
上間永遠とともに入団し、7月5日には初の一軍昇格。ヒットが出ないまま、7月25日に登録抹消となったが、この20日間は岸にとって野球人生で一番の経験だったという。
一軍に昇格し、まず
山川穂高に打撃について教えを乞うた。
「自分のスイングに強さが足りないと思っていて……。プロ野球で1、2を争う打者なので自分から聞きに行きました」と岸。「バッティングに正解はないから自分が今一番、強く振れるスイングで練習してみたら」という山川のアドバイスを受け、“全力で振る”ことを意識して練習するようになったという。今は、「(打撃の)形は一旦置いておいて、強く振れるようになってから形を意識しても大丈夫」いう山川の助言をもとにバットを振り込む日々だ。
そして肌で“すごみ”を感じたのが
栗山巧だった。
「栗山さんは僕が一軍に滞在していたときはDHでの出場が多かったと思います。1打席1打席、本当に入念に準備して打席に入っているのを見て、1打席にかける思いがすごいなって。自分がイメージしていたDHとは全然違っていました」。打席に向かうまでの、栗山のダグアウト裏での姿が脳裏から離れない。「(栗山さんを見て)“これがプロなんだな”と肌で感じました」と身をもって実感したという。

一軍では3打席に立って2打数0安打、1三振、1四球に終わった(球団提供)
岸はあの20日間を糧にして、再び一軍に戻るその日のため、鍛錬を重ねる日々だ。
「1年目で(一軍のトップ選手たちを)見て、感じることができたのは本当に良かったです」と話すが、次に上がる日には少ないチャンスで結果を残すことが求められる。「前回一軍で学んだことと、いま自分に足りていない部分を強化しているので、しっかり練習を続けてレベルアップして一軍に呼ばれたときにはヒットを打てるようにしたいと思います」と直近の目標を力強く話した岸。
CAR3219フィールドの強い日差しに照らされて一段と黒くなった岸は、たくましさを増しているように思えた。
西武ライオンズ