
今季はわずか1試合の登板にとどまっている寺島
夏も真っ盛りの7月下旬。夏の甲子園の出場校も全国で続々と決まりつつある。そんな中、今週28日発売の週刊ベースボールは「夏の甲子園、あの日の思い出」を特集する。現役のプロ野球選手に、夏の甲子園での思い出を語ったもらう企画だ。
ヤクルトからは、履正社高出身の
寺島成輝に登場してもらった。
ヤクルトのインタビューで、少し時間に余裕があるとき、必ずぶつける質問がある。というのも、ノンフィクションライターの長谷川晶一さんが
石川雅規の書籍を執筆中で、そのための「調査」をお願いされているからだ。石川について語ってもらうもので、寺島にも質問をぶつけた。寺島は「僕なんかが石川さんを語っていいのか」と言いつつ、甲子園の思い出話を聞いたインタビューよりも、饒舌に話してくれた。
寺島は石川のことを「まさにパーフェクトな人」と形容し、石川から授かった助言を、あれもこれもと矢継ぎ早に教えてくれた。ただ、技術的な話はない。マウンドに立つ心得と、気の持ち方。冷静に打者を見極めることなど。以前、
高橋奎二が結果を出した陰に、石川の助言があったことを記事にした。石川はその際に「奎二はほら、もともと素晴らしいものを持っていますから、技術云々よりも気持ちや考え方なのかな、と」と話していたが、これは寺島も同様なのではないか。同じ左腕として、先輩として、石川は常に若手の手本となり、困ったときには手を差し伸べるのだ。
「今年に関しては最初、石川さんは二軍におられたので。その練習中とかに、話をさせてもらいました」(寺島)。石川がファームで過ごしていた時間は、本人にとっても、若手にとっても、決してムダではなかった。“石川塾”を経て、高橋は結果を出した。次は、寺島の番だ。
文=依田真衣子 写真=高塩隆