3年前に創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 雨の日、しばし休戦

川崎球場に詰めかけた太平洋ファン
今回は『1973年5月21日号』。定価は100円。
稲尾太平洋、金田
ロッテの“遺恨試合”第2弾だ。
5月1日からのロッテ-太平洋3連戦(川崎)。まず1戦目は4対1でロッテが勝利したが、2戦目は雨で中止。今回は、このときの両監督の言葉を紹介しよう。
まずは首位を走る太平洋・
稲尾和久監督。
「この3年間みんなに訴えてきた。どんな名監督も名コーチもかなわない。お客さんが選手をうまくするんだ。ある段階まで力をつけると、それ以上はファンが引き出してくれるんだよ」
稲尾監督には、福岡のファンと一体になって南海、
巨人に牙をむいた西鉄黄金時代の記憶がある。それが特に黒い霧事件以後は、お客さんが激減し、しかも味方ファンからもヤジられまくってやってきた。
さらに言う。
「うちも最初はムードだけで勝ってきたが、最近は力がついてきた。過信はいかんが、力がついてきたという自信を持つのはいいと言っている。これから好不調の波はあっても大きく崩れることはない。自信がわいてきたよ」
前期優勝について聞かれると、
「とんでもない。まだ目鼻もついていない」
と言いながらも、
「ファンはこの3年間、ライオンズファンだと言えなかったうっぷんを晴らしている感じがする。ワシもこの3年間の辛酸を一気に返したい。その気持ちでいっぱいだ」
対して
金田正一監督は、パの展望をしていた。
「阪急と南海がこれから出てくるやろ。ことに南海や(この時点の3位)。阪急はあと10試合もたついたら前期は捨てるやろ(この時点5位)。どっちにしてもパには梅雨時に強いのは一人もおらん。だからうちの練習量がものを言うはずや」
また、太平洋については、
「やれ身売りがどうのと騒がれていた時代から見たら、えらい違いや。そりゃ、お互いにマスコミに取り上げてもらうため、いろんなこと言い合ったりしたが、遺恨なんかこれっぽちもありゃせん」
とすでに遺恨の話題作りは終わったかのように話した。
しかし、一度火がついたファン心理はそう簡単なものではない。5月3日の第3戦は、かなり危ない試合になる。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM