社会人の2大大会で登板
今年のドラフト候補の中での即戦力左腕としては、
隅田知一郎(西日本工業大)と並んで真っ先に名前の挙がる存在だ。
社会人1年目はNTT西日本の補強選手として都市対抗に出場し、2年目の今年はチームを日本選手権出場に導いた。ただし、2大大会ではトータル3試合8回2/3を投げて14本の安打を浴びており、まだ全国の舞台で実力を発揮できていない。それでも登板試合には多くのスカウトが球場に駆けつけるなど、ポテンシャルの高さは知れ渡っている。
主将を務める森山誠は捕手目線から注目左腕をこう見ていた。「ランナーを背負ってピンチになったときのギアの上がり方が、他のピッチャーとは違いますね。同じ真っすぐでもバッターに向かっていく気持ちがすべてボールに乗ってくるような感じなので、球速は変わらなくてもボールの威圧感、バッターに対しての迫力がすごいなと思います」
左腕から繰り出す150キロに迫るストレートは迫力満点。3月のプロアマ交流戦では
阪神二軍を相手に3回を1安打無失点、4月には
オリックス二軍を6回途中無失点に抑えている。昨年7月にも阪神二軍を4回無安打無失点に封じており、ハマった際はプロ相手にも通用することを証明している。
元プロの薫陶で急成長
今夏の日本選手権は2回戦(対JR四国)で初登板。立ち上がりに2失点し、以降6回までホームを踏ませずに先発の役割を果たすも、チームはサヨナラ負け。「立て直せたのは良いことですけど、初回にやってはいけない連打を食らったので。細かいコントロール、入り、ピンチで踏ん張る……チームを勝たせることがすべてやと思っているんで」。過去のプロ相手の好投については「いろんなバッターと対戦して収穫もあり、ちょっと自信はついたんですけど、ここ一番で投げ切れてない。今日も自分の力を出せるようにならないとダメですね」と、表情は冴えなかった。
厳しめのコメントが並んだが、山口敏弘監督の評価は悪くない。「立ち上がりだけでしたね。低めには行ってたと思うんだけど、少し真ん中に集まったのが初回だったのかな。その後は6回まで腕もしっかり振れて、スピンの効いた良いボールが行っていたと思います」。視察に訪れた
楽天の
愛敬尚史アマチュアスカウトグループ・マネジャーも「コントロールが良いからゲームを作れる。計算できるし、大崩れしない。去年のほうがストレートの強さはありましたけど、今年のほうが低めにいろんな球種を投げられている。先発でも中継ぎでも対応できると思います」との見方を示した。
関大時代に
山口高志コーチ(元阪急)の指導を受け、4年目に急成長。今や実力、経験、ポテンシャルの総合値はアマチュアトップクラスだ。上位評価は揺るがない。
文=小中翔太 写真=BBM 週刊ベースボール別冊秋嵐号『2021ドラフト候補選手名鑑』より