屈辱的な数字に苛立ち
法大の四番・岡田悠希は東大1回戦(10月23日)を2安打1打点で、チームの今季初勝利に貢献した
実戦からの長期ブランクは、投手よりも打者のほうが、その影響は大きかったようだ。
法大は東大1回戦(10月23日)で、7試合目にして今季初勝利(11対1、3引き分けを挟む)を挙げた。四番・岡田悠希(4年・龍谷大平安高)は2安打1打点で、ようやく主砲としての役割を果たした。
開幕から6試合で打率.130(0打点)と、規定打席到達者で最も下にいた。
同連盟ホームページで自身の結果を「見ていました」と言う。10月11日のドラフト会議では
巨人5位指名。屈辱的な数字に、心の底では「苛立ちはあった」と明かすが、副将という立場から、個人的な思いは封印。「やるしかない。1打席1打席を大事にしていこう」と、チームのために前を向いた。
打撃不振の理由。真剣勝負から離れていたことが原因であることは、明らかだった。法大は新型コロナウイルスの集団感染により、8月20日から活動停止。9月25日に再開したが、対外試合を消化できないまま、10月9日の開幕(対立大)を迎えた。「変化球、ストレートの対応面で、ボールを見ていなかったので……」。いくらフリー打撃で打ち込み、シート打撃や紅白戦を積んでも、リーグ戦の「生きた球」とは大きく異なる。法大は6試合で6得点。3引き分けはいずれも0対0と、防御率0.82の左腕・
山下輝(
ヤクルト1位)ら投手陣が踏ん張っていた一方で、攻撃陣の不振は深刻な状況だった。
今秋は9月11日の開幕を予定していたが、法大の活動状況を受け、同連盟内で協議。連盟役員、5大学の理解があり、開幕を1週遅らせ、平日の予備日を使用する日程変更で、6校によるリーグ戦開催が実現した。出場辞退、不戦敗を覚悟していた法大にとっては、これほどありがたいことはなかった。
「トリプルスリーを目指す」
法大はすでにリーグ優勝の可能性が消滅しているが、東京六大学は対戦5校との対抗戦。最後まで神宮でプレーする責任と感謝を、体現しなければならない。岡田は背中で示そうと努力を重ね、7試合目でようやく形となった。法大・加藤重雄監督は「飄々と見えますが、副キャプテンであり、表に出せないつらさもあったと思う。チームのために頑張ってくれている」と目を細めた。岡田は言う。
「成績が出ず、そのまま落ち込んでしまえば、それまで。苦しいときこそ、結果を求める。この経験は必ず、今後に生きてくる」
岡田は高校2年春のセンバツ甲子園で本塁打を放つなど、名門・平安で華々しい道を歩んできた。法大入学以降も期待されながら、3年秋のリーグ戦デビューという遅咲き。同秋、今春とも2本塁打を放ち、プロ入りへとつなげた。
幾多の壁を乗り越えてきただけに、心・技・体で豊富な引き出しがある。プロでの目標を問われると打率3割、30本塁打、30盗塁の「トリプルスリーを目指す」と力強く語った。まずは、残された試合で、最後の1球まで全力プレーを貫き、後輩たちに伝統をつないでいく責務がある。
文=岡本朋祐 写真=斎藤豊