先発陣の柱である2人
広島・大瀬良[左]、九里
広島ファンにとっては、これ以上ない朗報だろう。FA権を取得して去就が注目されていた
大瀬良大地、
九里亜蓮の両投手が残留を決めた。ともに3年契約を結んだとみられる。投手キャプテンを務める大瀬良は今季3年連続3度目の開幕投手を務め、23試合登板で10勝5敗、防御率3.07をマーク。九里は25試合登板で13勝9敗、防御率3.81で、
阪神・
青柳晃洋と並び、自身初の最多勝を獲得して飛躍の年になった。
スポーツ紙記者は「これ以上ない戦力補強でしょう」と分析する。
「四番の
鈴木誠也がポスティングシステムでメジャー挑戦の意向を表明し、得点力ダウンはどうしても避けられない。ここで大瀬良と九里が他球団流出になったらショックが大きかったが、2人とも残留してくれた。大瀬良は今季8月以降7勝を挙げたように、体調が万全であれば最多勝を狙えます。九里は体が頑丈でタフなので1年間先発ローテーションとして計算できる。2人が先発陣を引っ張る形で、
森下暢仁、
床田寛樹、今年頭角を現した
玉村昇悟と十分に戦える戦力になる」
2人の広島残留を信じていたファンは多いのではないだろうか。大瀬良と九里は「広島愛」が強いことで知られていた。大瀬良は九州共立大でアマチュア球界No.1と称される評価を得てドラフト1位で広島、
ヤクルト、阪神が競合。広島が当たりクジを引いた。背番号14は尊敬する「炎のストッパー」と呼ばれた
津田恒実が背負った番号だった。「津田さんら先輩が着けていた偉大な番号。それくらいの選手にならなければいけない。14といえば大瀬良、とファンの印象に残るよう頑張っていきたいです」と入団した際に心に誓っていた。そして、毎年のように、山口県周南市にある津田氏の墓前に手を合わせに行っている。「何かを求めているわけではない。『14番』という同じ番号を着けさせてもらっている身としては、行かないとダメだなと勝手に思ってやっている。あいさつをしておきたいです」と思いを語っている。
九里は新人時代の春季キャンプ休日に宮崎県日南市の「京屋酒造」で酒造りを体験した際に焼酎ラベルに「一途」と記し、生涯広島を宣言したことが話題に。先輩の背中も追いかけてきた。週刊ベースボールのインタビューで、「黒田さんの投球が理想とするピッチングスタイルなので、そこを目指してやっています。黒田さんにはシーズンの終わりごろに『お前のピッチングは完ぺきを求め過ぎだ。完ぺきを求め過ぎるな』という言葉をもらいました。そこで先ほど言ったような考え方の変化がありましたね。黒田さんの影響は大きいです」と語っている。1球1球に気持ちを込め、打者に攻撃的な姿勢を貫く投球スタイルは日米通算203勝を挙げた
黒田博樹氏と重なる。
プロ入り後、互いに切磋琢磨
大瀬良と九里。同学年で切磋琢磨してきた2人が互いの決断に影響を及ぼしたのは、想像に難くない。14年にともに開幕先発ローテーション入りしたが、新人2人の開幕ローテ入りはドラフト制以降初の快挙だった。九里はその際、「アイツはアイツで注目されるだけの力があるすごいピッチャーですから。それは素直に認めているところです。開幕から先発ローテに入って、結果を求められる立場は同じ。ライバルであり、チームメートでもあるので、切磋琢磨しながら頑張りたいですね」と語っている。
大瀬良は17年に、「僕はキャンプで離脱してしまったのですが、その中で亜
蓮が結果を残し、先発ローテに入ることが決まったとき、『大地と1年間ローテーションを守り抜きたい』と言ってくれたんです」、「シーズンに入っても亜蓮はいいピッチングをしていましたし、『負けていられない』という気持ちでしたね。ローテーション的に亜蓮のほうが登板が早かったので、『絶対に俺もいいピッチングをしてやろう』という気持ちでマウンドに上がっていました」と特別な思いを口にしていた。
2人はライバルというより戦友に近い。これからも切磋琢磨し、広島の黄金時代復興を目指す。
写真=BBM